“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、第1志望の大学付属に「不合格」特待合格狙いも「失敗」……それでも「やって良かった」と母が語るワケ

2021/02/14 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

「大学付属のB中学に行くより、いい大学へ」娘の宣言

 しかし、その翌朝、成美さんは愛華ちゃんの「変化」を感じたという。

「3日目は第2志望校C中学の受験日でした。親子で言葉少なく、C中学に向かったのですが、愛華がC中学の校門の前で、こう言ったんです。『ママ、私の受験はまだ終わってない。昨日は昨日、今日は今日。今日成すべきことをするだけ! 最後の勝負、行ってくるね!』って。びっくりしました。愛華がその瞬間、私を追い越して、すごく大人になった気がしたんです。愛華の顔がまぶしくて、輝いているように見えたので、ああ、愛華は『大丈夫』だと思えて、そこでも、また涙があふれました……」

 C中学の結果は合格。しかも「特進コース」という大学進学実績に関しては期待大のコースでの合格となったそうだ。

 受験が終わった愛華ちゃんは最近、成美さんに、ある宣言をしたという。

「ママ、私はC中学で頑張って、大学付属のB中学に行くよりも、いい大学に入るからね!」

 成美さんいわく、これは娘からの思いやりであり、「母のB中落ちショックを緩和しよう作戦」の一環での発言らしい。「愛華は本当にやさしくて、自慢の娘です」と言いながら、成美さんは、今の心境を次のように明かしてくれた。

「正直、B中学に対する未練はあります。B中学は私の憧れの学校だったので。でも、そんなこと、本当に些細な問題だなとも思えるようになってきました。愛華はたった3日間で、ものすごく成長したような気がするから。こんなに強い子なんだ、こんなに芯のある子に育ってくれたんだって……。我が子ながら『すごいな』って思いました。これを目の前で見られて、実感できただけでも、中学受験、やって良かったです!」

 中学受験終了組の母に、当時の話を聞くと、たびたび成美さんと同じことを口にする。

 中学受験は「我が子が成長する瞬間をこの目で目撃することができるもの」なのだ。これは、親にとっては合否を越えた天からのギフトであると思っている。今年も、たくさんの家庭にこのギフトが届けられていることだろう。

 愛華ちゃんは現在、来月には届くであろうC中学の制服を心待ちにしているという。

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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最終更新:2021/02/14 16:00
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