“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、第1志望の大学付属に「不合格」特待合格狙いも「失敗」……それでも「やって良かった」と母が語るワケ

2021/02/14 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 コロナ禍の中で実施された今年度の中学受験だが、幸い大きな混乱もなく、ほぼ全日程を終了しつつある。つまり今は受験終了直後であり、各家庭では結果をめぐって、悲喜こもごもであろう。

 第1志望校に合格すれば「我が世の春」状態であるものの、昨今の中学入試は第1志望校に合格する子は5人に1人といわれるほどに厳しい世界。つまり「合格切符」を手にしていても、なお「第2志望校以下に合格」という結果に満足できず、人知れず泣いている家庭もたくさんあるのだ。

 関西地方に住む愛華ちゃん(仮名)の中学受験の結果は、3戦2勝1敗であった。

 初日の受験校A中学は「特待合格は間違いないですから、ここで特待を取って、自信を持って第1志望校を受験しましょう!」との塾の強い勧めで受験した、いわゆる滑り止め校。

 ところが、結果は「単なる合格」だったため、愛華ちゃんにとっても母である成美さん(仮名)にとっても、素直には喜べない合格であったという。

 「まさかの“特待なし合格”なんですよ。ええ、普通の“合格”ってことです。信じられませんでした。“入学金授業料全額免除”が確実だったはずなのに、普通の合格ってあり得ます? 実は塾には『A中学は、校風が愛華には合わないから、本当に受けていいのか?』と何度も聞いていたのですが、押し切られる形になって……。でも結局、私たちがそれを受諾したのがいけないんです。だから、これは『親の選択ミス』なんだと思ったら、頭が真っ白になってしまって、不安しかありませんでした」と成美さん。

 愛華ちゃんは何とか気を取り直し、翌日は第1望校である大学附属B中学に向かった。模試でも合格確率8割を切ったことがないという、ある意味“太鼓判”を押された本命校B中学は、親子ともにお気に入りの学校。しかし、どういう運命の悪戯か、結果はまさかの不合格だった。

「この3年間、愛華は本当に真面目に頑張ってきたんです。それなのに……。B中学に入りたくて、頑張ってきた愛華の願いをどうして神様は叶えてくれないの? って思っただけで、涙が止まらなくなって。愛華のほうが数万倍つらいでしょうに、私は本当にダメな母親です……」

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