『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』日本最高齢ストリッパーとファンたちの日々「私が踊り続けるわけ ~53歳のストリッパー物語~」

2021/02/08 15:54
石徹白未亜(ライター)

ストリップ劇場では「エロい」感覚にはならない

 以前、浅草ロック座でストリップを見たことがある。見たことがない人は退廃的な雰囲気を想像してしまうかもしれないが、実際は全く異なり「仏像や、古刹を見る時」の感覚に近かった。

 歴史ある荘厳な寺を訪ねると自然と湧いてしまう「ありがたい」という言葉にとても近い。「エロい」という感覚には、驚くほどならない。ロック座の化粧室には踊り子さんへのメッセージノートが置かれていて、それは「ありがたい」状態になっているファンの熱い言葉で占められていた。

 番組内でストリップ劇場は女性客も今は多い、と伝えられていたが、私がロック座を訪ねた時も1~2割は女性客だったし、女性客が不快な思いをするような言動をするような男性客もいなかった。ロック座を訪ねたのは取材で、2020年3月だったのだが、当時は新型コロナウイルスによるトイレットペーパーの買い占めが社会問題になっていた。

 そのため、観客の中年男性は「差し入れに」と、当時は入手が困難であったトイレットペーパー12ロールパックを渡していたが、そんな姿は愛美だけでなく劇場スタッフにも差し入れを持参する星組と重なった。

 もちろん、ストリップファン全員がそうではないだろうが、しかし私が浅草ロック座で見たファンや、今回番組に出ていた星組の男性たちは、「ハァハァ」でも「ニヤニヤ」でもなく、それどころかとても紳士的であろうと心がけているのがよくわかったし、星組の愛美に対する思いは健気なほどだった。

 初めて行ったロック座は、ストリップそのものも感動したが、この客層もカルチャーショックに近い感動があった。今までの人生において「行ってみて印象が大きく変わった場所」断トツ1位だ。何かちょっと日常に活を入れたい、という人には迷わずお勧めしたい。ちょっとした海外旅行より発見と驚きがあると思う。

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