“中学受験”に見る親と子の姿

“中学受験恐怖症”になった娘……1月校含め“5連敗”、母が後悔する「言ってはいけなかった」一言

2021/01/24 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

「連敗は私のせい」「私がうろたえて」母の後悔

 菜々美ちゃんは1月受験の不合格から立ち直れないまま、2月受験に突入して連敗、そして「受験恐怖症」に陥ってしまった例だと思われる。

 「私がいけなかったんです……。合格が当然だとされた1月校に不合格になってしまい、私がパニックになってしまって。それで、菜々美に『大丈夫なの?』って何回も確認しちゃったんです……」と敦子さん。

 「大丈夫なの?」という言葉の中には、「安全圏と思われた1月校を落としているのに、本番は大丈夫なの?」という意味だけではなく、「過去問の合格最低点を越えてないけど大丈夫なの?」、さらには「風邪を引いてない? 大丈夫?」というようないろいろな意味が含まれていたそうだ。

「菜々美はしっかり者で、私はいつも頼ってしまうところがありました。でも、あの子はいつも笑って『大丈夫だよ』って答えてくれていたんですが、考えてみれば、菜々美のほうが不安ですよね……。それなのに、母である私がうろたえて、あの子にストレートに自分の不安をぶつけていたんです。あの連敗は私のせいです……」

 結局、菜々美ちゃんの受験は3日で終了し、1月校も合わせると5連敗という結果で終了した。

 ところが、ほどなくして1日午前校のAから、繰り上げ合格の知らせが届いたそうだ。

「もう本当に、これで救われましたね。もし全て不合格だったら、菜々美はもちろん、私も立ち直れなかったと思います。私が現役のお母様たちに申し上げたいのは、併願校対策は『まさかのまさか』までを考慮しながら、組み立てておき、慌てて動いてはいけないということ。そして、どの口が言うのかといわれそうですが、お子さんにお母さんの不安をぶつけないってことです」

 中学受験は親子の受験なので、「まさか」が起こると親のほうがパニックになり、戦略を見失いがちだ。

 状況が厳しければ厳しいほど、親には冷静さが求められるのだが、言うは易しで、これもシミュレーションを繰り返しておかないと、「イザ」という時に泥沼にはまりかねないのである。

 しかし、一番大切なことは、敦子さんがアドバイスするように「親の不安」を子どもには極力見せないことであろう。

 子どもに、気分よく受験してもらい、上昇気流に乗せる。そのために、子どもの身になって、「自分が受験生だったら、どうしてほしいか?」ということを常に意識しながら、これからの本番に臨んでいただきたい。中学受験親子が、笑顔の春を迎えることを祈っている。

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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最終更新:2021/01/24 16:00
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