[再掲]佃野デボラのホメゴロシ!

『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』北川悦吏子氏の脚本は「不安」!? “朝ドラ大炎上”から繙く革命的な表現手法

2021/01/13 21:30
佃野デボラ(つくだの・でぼら)
『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)公式サイトより

 本日1月13日午後10時より、連続ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系、以下『ウチカレ』)の放送がスタート。女優・菅野美穂が主演を務め、浜辺美波、沢村一樹、岡田健史ら、豪華な共演者が名を連ねている。

 恋愛小説家のシングルマザー・水無瀬碧(菅野)が、恋愛をしないオタクの娘・空(浜辺)とともに、親子で新たな恋に踏み出す「エキサイティングラブストーリー」と銘打つ本作。昨年10月に情報が解禁されると、約4年ぶりに連続ドラマ主演を務める菅野に期待が寄せられる一方、ネット上では「内容が時代遅れ」といった声が上がり、脚本を担当する北川悦吏子氏に対して「不安」だと訴える人も続出した。

 90年代に大ヒットドラマを多数世に送り出した北川氏だが、2018年にNHK連続テレビ小説『半分、青い。』の脚本を務めた際、自身のTwitterアカウントで作品の解説や感想を意欲的に投稿したことで、たびたび炎上。これにより世間から大きな注目を集め、結果的に作品への感心が高まったのも事実であり、『ウチカレ』でも同様の動きが起こる可能性はあるだろう。

 サイゾーウーマンでは『半分、青い。』の放送中、芸能ウォッチャー・佃野デボラ氏の記事にて、炎上の発端となった北川氏のツイートを振り返りつつ、彼女の“革命的”な表現手法を掘り下げていた。北川氏が発明した「新しい」ドラマの楽しみ方を再確認すべく、『ウチカレ』スタートの前にあらためて同記事を掲載する。
(編集部)


(初出:2018年6月13日)

朝ドラ『半分、青い。』脚本家・北川悦吏子の“革命的な表現手法”“トレンディ霊力”をホメゴロス

テレビ・芸能ウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。

【今回のホメゴロシ!】Twitterと同時進行で楽しむ“神”朝ドラ『半分、青い。』が革命的な理由

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』がすごいことになっている。『愛していると言ってくれ』(TBS系)『ロングバケーション』(フジテレビ系)など、90年代に数々のヒット作を生み出し「恋愛の神様」の異名をとる北川悦吏子(以降「神」と呼ぶ)が脚本を手がける本作は、神自らNHKに企画を持ち込み3年の歳月をかけて成就させたという。「朝ドラに革命を起こした」と神自身が言い切るだけあって、このドラマ、かなり“革命的”だ。4つの革命ポイントをみていこう。

4本立てのメディアミックスが革命的

 放送開始の1年以上前から、独自の制作スタイルが耳目を集めていた。神がTwitterでドラマ内に取り込むネタを募集し、「ドアが3枚以上ある車ではモテない」や、漫画家を目指すヒロイン・鈴愛(永野芽郁)の相手役である律(佐藤健)の飼っているペットの種類(亀)とその名前「フランソワ」、漫画アシスタントの同僚・誠(志尊淳)の愛称「ボクテ」など、一般視聴者から寄せられた数多のネタがそのままの形で劇中に反映されたのだ。この軽やかさと大胆さ。さすがは一時代を築いたインフルエンサーである。

 神の“お示し”であり、民との交わりの場であるTwitterは、うつろいやすい神のお気持ちを著したポエムをはじめ、脚本の進捗、制作中の愚痴、熱い自画自賛などのツイートが頻繁に更新されており、ドラマのサブテキストとして必読だ。放送直後に《あれ、今後のストーリーの伏線にもなって来ます》と、わざわざ伏線のありかを教えてくださったり、行間を読んだ視聴者の感想ツイに神自ら「そうじゃない」と訂正されたり、批判的な意見を述べる視聴者に「嫌なら観ないでいい」と忠告されることもある。こうした「脚本家による視聴者との距離の取り方」も非常に革新的である。

 また、台本に書いた台詞がカットされたことに大層おキレになり《みんな!オンエアが完璧なものとは思わないで!》《やさしく脳内補完を、お願いします》という“お触れツイート”を投下されたこともあった(現在は削除済み)。さらにその後続けざまに《カットされたセリフやシーンが蘇ります。 半分、青い。 上 [楽天]》と、ノベライズ版の宣伝を差しこむあたりの商魂もたくましい。

 つまり『半分、青い。』とは
・ドラマ本編
・Twitterでの神による補足説明
・ノベライズ版(上下巻)
・視聴者による「やさしい脳内補完」
の4点セットで初めて完結する、まったく新しいタイプのメディアミックス朝ドラなのだ。あの『パ★テ★オ』も『赤い糸』(ともにフジテレビ系)もなし得なかった4本立てである。これは斬新というほかない。

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