K-POPタテ・ヨコ・ナナメ斬り【番外編】

2020年、K-Popに氾濫した「ドゥンバキ」楽曲はなぜ生まれた? 音楽的側面から解説! 21年はaespaとStray Kidsに注目!? 

2021/01/04 19:10
サイゾーウーマン編集部

<付録解説>ドゥンバキの音楽的成り立ち

<解説:e_e_li_c_a・ DJ機器>

 もともとラブ子さんが示した「ドゥーンバキバキ」は、曲中のダンスブレイクのDubstepにおけるワブルベースやTrapのような部分を指しており、例えば、この動画の3:59~が該当します。

■2018 MAMA in KOREA Stray Kids/THE BOYZ

 その後、実際に「ドゥンバキ」と呼ばれた楽曲や「ドゥンバキ」のイメージに近い楽曲について音楽的側面から少し説明をしたいと思います。今回は海外のEDMなどフェスシーンに詳しいライターの高岡謙太郎さん(@takaoka)にもご協力いただきました。

 まずは、対談中にも名前が出たグループもありますが、20年にリリースされた「ドゥンバキ」楽曲例です。

■VERIVERY – G.B.T.B

■GHOST9 – Think of Dawn

■D-CRUNCH _ Across The Universe(비상(飛上))

 音楽的な下地としては12年、Hudson MohawkeとLuniceのユニット「TNGHT」がリリースした、Trapを取り入れたこの曲がダンスミュージックシーンとしてもインパクトが大きく、その後のポップミュージックのトレンドに影響を与えたといわれています。

 それまではTrapはアメリカのHiphopの中の1ジャンルという認識でしたが、この曲によってダンスミュージック(EDM)にもTrapが取り入れられ始めます。太いホーンのダークな印象やドラムの打ち方に何となくドゥンバキっぽさを感じられるでしょうか。

■TNGHT – Higher Ground

 楽曲の参照元としてはYellow Clawというオランダ人2人のデュオがやっていたEDM Trapとポップスの融合が起点ではないかという予想です。DJ SnakeやDiplo、Chainsmokersなどが2012年頃から同時多発的にそのような楽曲をリリースしています。

 あわせて、この曲を参照してそうだなと思われるK-POP楽曲を下に記載します。

■Yellow Claw – Shotgun ft. Rochelle (2013)

몬스타엑스 (MONSTAX) – 히어로 (HERO) (2015)

■DJ Snake, Lil Jon – Turn Down for What (2013)

BTS(방탄소년단) – FIRE (불타오르네) (2016)

■The Chainsmokers – Don’t Let Me Down ft. Daya (2016)

2PM – Promise (I’ll be) (2016)

■Yellow Claw – Good Day ft. DJ Snake & Elliphant (2017)

JBJ – Say My Name (2017)

 K-POP側の流れとしては、16年頃にBass MusicとTrapジャンルを混ぜたような楽曲(BTSの「Fire」やEXOの「Monster」など)が上記の楽曲などを参照しリリースされたのが始まりのように思います。

 また、EDMとトラップの折衷を目指しているという点では、Steve Aokiの楽曲も近いのではないでしょうか。彼自身、BTSやMONSTA XなどのK-POPアーティストとのコラボをしています。この曲の0:50~に注意して聞くとわかりやすいと思います。

■Steve Aoki – Kolony Anthem feat. ILoveMakonnen & Bok Nero (2017)

 2016年の同時期にリリースされたNU’ESTの「Overcome」やBTSの「Save Me」などにみられる「Future Bass」と先程のBass Music+Trapが融合して、現在のいわゆる「ドゥンバキ」を表すような楽曲に進化して行ったのではないかと思いましたが、高岡さんからはどんどんとエモーショナルな方向に進んでいったTrapやEDMがそのままK-POPに参照されているのではないかという話もありました。

 ちなみにK-POPを追っていると、Future Bassというジャンルはダンスミュージックのメインストリームと感じるかもしれませんが、EDMシーンではどちらかというとクラブなどに行かない人でもSoundcloud上にアップして楽しむものだったり、少しアングラなイメージがあるものです。

【TrapやEDMがエモーショナルな方向に進んだ楽曲例】

■ODESZA – Loyal (2018)

 ODESZA(オデッザ)のSpotifyやYoutubeでの楽曲総再生数は億を優に超えており、グラミー賞にもノミネートされています。ちなみに18年のCoachellaのライブは圧巻で、これをライブで目の当たりにしたら正直テンションが上がって飛び跳ねてしまう自信があります。

■Illenium – Afterlife (feat. ECHOS) (2016)

 上ネタに気が取られると、ドゥンバキ? となりますが、ドラムやベースなどのリズムセクションに注意して聞くとわかりやすいと思います。

 Dubstepはベース部分の音色がジャンルを規定しているため、あまりほかに使い回しがきかず、Trapはビート部分がジャンルを規定しているため使いやすくポップスに転用しやすいことから、上記のTrapが進化した形のような楽曲がたくさん生まれ、さらにそこからK-POPに落とし込みやすかったのではないでしょうか。

 また上記の楽曲は、Youtubeでの再生数が1千万回以上だったり、グラミー賞など音楽賞を取っている楽曲なので探し出しやすく、事務所やA&Rが参照元として挙げ、作曲を依頼しているのではないかという予想が立てられます。

 対談の中にも出てきましたが、「様になるドゥンバキ」と「そうでないドゥンバキ」があり、説得力を持たせる要素があるかどうかという点が出ましたが、それ以外にも前編のJO1のところで書いたような、表面をなぞっている楽曲(参照元が今まで挙げたEDM本場の楽曲なのか、それを参照したK-POP楽曲を参照しているのか)かどうかというのもあるでしょう。「2020年のドゥンバキはドゥンバキしか感じない」という感想が対談の中で出ましたが、これは既存のK-POP楽曲を参照してできたK-POP楽曲が多い印象にもつながるかと思います。

 本編の後編に『Kingdom』に出演するStray Kidsの話が出てきましたが、彼らはメンバーたちが組んだユニット「3Racha」を中心に自分たちで楽曲を作成しており、歌詞にもイギリスのラッパーでトラックメイカーである「Skepta」の名前が出てきます。

■3RACHA – P.A.C.E. (2017)

 この曲は、聞けば明らかにこれを参照元としていることがわかると思います。

■Skepta ft. JME – That’s Not Me (2014)

 この曲に関しては、明確にどの曲というのはないですが、ラップも含めてStray Kidsの楽曲を聞いたことがある方には「Stray Kidsっぽい」というのが分かってもらえるのではないでしょうか。

■NEFFEX – Fight Back

 自分たちで楽曲制作をしてパフォーマンスする人たちは「表面をなぞる」の部分が自分たちでコントロールできるところに強みがあるため、この部分をどう『Kingdom』にうまく生かせるかが、今後にもつながってくると思います。

 これは『Road to Kingdom』のせいもあるかもしれないですが、その曲を通して何かを伝えたり自分たちの立ち位置を上げるというよりも、パフォーマンスをかっこよくこなしてファンに頑張っているところを見せたい、ー勝負感が内向きに感じるという話も対談の中で出ました。

 また、ドゥンバキ楽曲でパフォーマンスをすると実際はラップやボーカル、ダンスだったり何かしらのスキルが少し足りない状態でもパッと見は本格感が出せることから、経験が浅くスキルがまだ少し足りていない新人グループが手を出しやすいのではないかという予想も出ました。

 なぜこのような楽曲がリリースされるかについては、K-POPにありがちなビジュアルや世界観(ダークでシリアス、若者の葛藤、若干の暴力性など)を体現しやすいのではないか、BPMや曲の構造などが本格派に見えるダンスパフォーマンスと相性がいいのではないか、などが考えられ、ドゥンバキと呼ばれるような楽曲がK-POP的な要素との相性が良く、「パフォーマンス楽曲」として便利なのではないかということが考えられます。

 今は「ドゥンバキ」=「ダサい」というイメージがついてしまっている方が多いかもしれないですが、一概にダメなものではなく、パフォーマンスを裏付ける経験やスキルを兼ね揃えているグループがやればかっこいいものになるということも認識してもらえたら、今回の企画をやった甲斐があります。

 

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最終更新:2021/02/05 18:07
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