『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』「親に悪い」が浮かばない子ども「『おじさん、ありがとう』~ショウとタクマと熱血和尚が遺したもの~」

2020/12/28 22:18
石徹白未亜(ライター)

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。12月27日は「『おじさん、ありがとう』~熱血和尚が遺したもの~」というテーマで放送された。当番組は民放連賞・テレビ教養番組最優秀賞を受賞している。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 愛知県岡崎市にある「平成の駆け込み寺」こと西居院の住職・廣中邦充さんは非行、虐待、引きこもり、薬物依存といったさまざまな事情から親の元で暮らせない子どもを、無償で引き取り、更生させてきた。

 2008年、西居院に九州からやってきた特攻服を着こなす古典的なヤンキー・タクマは、もともと将来を期待されたサッカー少年だった。しかし、母親が薬物依存で逮捕されたことで「九州の中学生ヤクザ」と呼ばれるまでに荒れ、西居院に預けられる。しかし西居院の中でのタクマは、兄貴分で面倒見がいい。

 同時期に西居院にやってきたショウは、「見るからにヤンキー」感はなく、生気のない少年だ。母親の再婚で生活が荒れだし、バイクを30秒で盗める腕を持つ。警察から矯正施設に預けられる前に、西居院へ引き取られた。

 しかし、ショウは不良グループの縄張りでバイクを盗んだことから目を付けられ、集団で暴行される。地域の不良グループは暴力団が背景にいることもあり、一度、暴力団と関係ができると手を切るのは困難になる。廣中さんは不良グループとショウのつながりを絶つため、金属バットを持った不良グループの集団に夜、話をつけに行く。

 感謝したショウは改心したのかと思いきや、その後も寺を飛び出し、西居院の子どもたちが冬の夜の街を探し回っても見つからない。その後、ようやく見つかったショウをタクマをはじめ、寺の子どもたちが本気で怒り、そこでショウはようやく改心する。

 廣中さん自身もかつては荒れた子どもだった。高校時代に退学を迫られたとき、校長に土下座して退学を回避しようとした担任の姿を見て改心したという。献身的に子どもを支え続けた廣中氏は、子どもたちに「逃げるな」と呼びかけ続けた。

 子どもたちの支援を続けてきた廣中さんだったが、12年に肺がんが発覚し、のちに脳にも転移する。寺を中学卒業とともに「卒業」したタクマは、18年に11年ぶりに、寝たきりとなった廣中さんを訪ねる。その後、19年4月、廣中さんは多くの西居院卒業生に見送られ69歳の生涯を終える。

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