インタビュー

冬の乾燥、アルコール消毒から“手”を守りたい! 皮膚科医が教える「ひどい手荒れ」「ひび割れ」ケアの豆知識

2020/12/09 20:00
川崎加織(皮膚科医)
冬の乾燥、アルコール消毒から手を守りたい! 皮膚科医が教える「ひどい手荒れ」「ひび割れ」ケアの豆知識の画像1
写真ACより

 乾燥によって、“手荒れ”を起こしやすいこの季節。今年はさらにコロナ禍で、アルコール消毒を行う機会が増えているが、手が荒れているからといって消毒をしないわけにはいかず、しかし、荒れた手にアルコールがしみる……といった、負の連鎖に陥っている人も少なくないのでは。手荒れをしやすい人にとっては、例年以上に“地獄”ともいえる今、手を守るためには、一体どうしたらいいのだろうか? 「皮フ科かわさきかおりクリニック」の川崎加織院長に話を聞いた

――そもそも、なぜ手は荒れやすいのですか?

川崎加織院長(以下、川崎) 手は顔にあるような「脂線」という、脂を出す線がありません。足の裏も脂線は存在しませんが、手は乾いた空気に触れることが多く、水分が蒸発しやすいため、特に乾燥してしまうんです。

 また、今年は「アルコール消毒で手が荒れやすくなった」と感じる人が多いと思います。その理由は、皮膚の表面の「角質層」に「角質細胞間脂質」という、肌内部の水分が蒸発するのを防ぐ成分があるのですが、アルコールはこれを溶かしてしまうんです。そのため、肌を防御するバリア機能も落ちてしまって皮膚の表面がスカスカになり、手が乾燥してしまいます。その結果、手に炎症を起こし、かゆみが出たり、赤くなったりと、“手荒れ”の状態になるんです。すでに手湿疹になっている状態でアルコール消毒をすると、刺激にもなり、悪化の原因にもなりますね。

――手が荒れている場合は、アルコール消毒をしないほうがいいのでしょうか?

川崎 新型コロナウイルス感染予防を含め、アルコール消毒には意味がありますから、手が荒れるからといて、避けるのはよくないですね。しっかりと手洗いできればいいのですが、無菌状態にすることは、普通の方法では難しいと思われます。

――では、アルコール消毒をしつつ、手荒れを防ぐ方法はありますか?

川崎 一番有効なのは“保湿”ですね。保湿のために、ハンドクリームやワセリンなどが市販されていますが、「何を塗るか」は手荒れの状態によります。手荒れしやすい方の場合は、香りの強いハンドクリームなどは避け、シンプルで刺激の少ないものを選びましょう。また、クリームやローションタイプの保湿剤は、傷口にしみてしまうことがあるので、手荒れがひどい場合は軟膏タイプのものをおすすめします。べたつき感はありますが、刺激が少なくしみにくいです。

 一方で、どんな症状であっても、重要なのは「塗る回数」。保湿力の高いものを、小まめに塗ることが大切です。

――その他、この時期に注意するべき手荒れの原因、対策や予防法があれば教えてください。

川崎 アルコール消毒だけでなく、手を洗う頻度も高くなっていると思いますが、その場合も保湿が大切。手を洗ったあとは濡れたままにせず、しっかりと拭いてから保湿剤を塗りましょう。また、手が完全にひび割れている場合は、市販のハンドクリームではなかなか治せないので、皮膚科に行ってほしいですね。

 ちなみに豆知識ですが、ひび割れた時には、ばんそうこうを張るよりも、医療用の紙テープでケアしたほうがいいです。ばんそうこうは水に濡れるとビショビショになり、菌が繁殖しやすい状態を作ってしまいますが、紙テープだと水分をしっかり拭き取れるので、傷口を清潔に保ちやすいですよ。

■川崎加織(かわさき・かおり)
皮フ科かわさきかおりクリニック院長。医学博士、 日本皮膚科学会認定皮膚科専門医、日本抗加齢医学会専門医。兵庫医科大学病院初期研修医、 皮膚科入局からキャリアをスタートし、明和病院、 西宮わたなべ前浜クリニック院長などを経て、 現クリニックを開院。皮膚科専門医として、女性医師として、母として、 患者さんの心と身体に寄り添うことを信条としている。

最終更新:2020/12/09 20:00
ばんそうこう くださいな
はやく冬終わって~!
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