[再掲]インタビュー

ドラマ『チェリまほ』人気爆発も……「BL作品に魅力を感じる人少ない」大手映画会社の現状

2020/11/08 16:00
サイゾーウーマン編集部
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 テレビ東京系で現在放送中の連続ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称『チェリまほ』)が人気を博している。

 「全国書店員が選んだおすすめBLコミック2019」の1位を獲得した同名コミックが原作の同作は、童貞のまま30歳を迎えたことで、“触れた人の心が読める魔法”を手に入れた30歳のサラリーマン・安達清(赤楚衛二)が主人公。そんな安達が、社内随一のイケメンかつ仕事もデキる同僚・黒沢優一(町田啓太)に触れたところ、彼が自分に恋をしていることがわかってしまう……というBL(ボーイズラブ)作品となっている。

 同作は「ドラマ満足度調査ランキング」(オリコン調べ、10月20日~26日放送分対象)で堂々の第1位を獲得したほか、Twitterでも『チェリまほ』がトレンド入りするほど、人気が急上昇中。2018年4月期放送の連ドラ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)や、今年公開の映画『窮鼠はチーズの夢を見る』など、昨今、BL映像作品のヒットが続く中、『チェリまほ』はその勢いをさらに加速させる作品になるのかもしれない。

 サイゾーウーマンでは昨年に、BL映像化のパイオニア的存在であるビデオプランニングのプロデューサー・三木和史氏に取材を行い、昨今のBL映像作品を取り巻く状況について話をお聞きしていた。BL映像作品は、“イケイケどんどん”なブームの真っ只中にあるかと思いきや、制作側からすると、まださまざまな壁があるようだ。『チェリまほ』がまさにヒットする中、あらためて同記事を掲載する。
(編集部)


(初出:2019年05月10日)

『おっさんずラブ』BLブームはまやかし!? BL映画界のパイオニア語る“ヒット”のウラ側

 昨年春に放送されたドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)が、今年の夏に映画化する。2016年に“単発深夜ドラマ”として放送されたあと、好評を受け18年に深夜枠で連続ドラマ化。視聴率こそ振るわなかったが、最終話が近づくにつれネット上で人気が高まり、ドラマ放送中は「#おっさんずラブ」がTwitterのトレンドワード上位に浮上し、世界トレンド1位にもなった。深夜の単発ドラマが映画化まで飛躍した同作は、“平成最後の大ヒットドラマ”と言っても過言ではないだろう。

 また、現在放送中の西島秀俊と内野聖陽によるW主演ドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系)も、ネット上を中心に好評を博している。第1話の見逃し配信は120万回を突破し、これは動画配信サービス「ネットもテレ東」の過去最高再生回数だといい、数字でも結果を残した。20年公開の、関ジャニ∞・大倉忠義と、若手きっての実力派俳優・成田凌が主演によるW主演映画『窮鼠はチーズの夢を見る』も、ネットで早くも注目を集めている。これらに共通するのは、すべて男性同士の恋愛を扱った作品、いわゆる“BL作品”であることだ。

 かつてBLは「影でコソコソ楽しむ」ものだったが、そんな話は今や昔。ついにジャニーズにまで波及、かつてない盛り上がりを見せている。そこで、06~11年に映画『タクミくんシリーズ』を大ヒットさせた、BL映像化のパイオニア的存在であるビデオプランニングのプロデューサー・三木和史氏に、昨今のBL映像作品を取り巻く状況について語っていただいた。

BL企画が通らないのは「男同士でキスする」からじゃない!?

――近年、BLの映像作品が増えていますが、“先駆者”として、この状況に思うことはありますか。

三木和史氏(以下、三木) 実は僕も、3年前に『窮鼠はチーズの夢を見る』の原作を映像化しようと、版権を取りにいったんですよ。原作、めちゃくちゃ傑作じゃないですか。だから映画化したかったんですが、「上映規模が小さいと、ちょっと……」と難色を示されて。まあ、僕らがやるとすると低予算で、上映館数は全国でも10カ所ほどになってしまいます。ジャニーズの大倉くんと、人気若手俳優の成田くんが演じて、行定勲監督ときたら、そりゃあ上映規模は大きいでしょう。「やられたー!」と思いましたね。

――ほかにも、NHKでは現在『腐女子、うっかりゲイに告る。』という、ゲイの主人公が登場するドラマが放送されています。

三木 NHKだからやれることに限界はありそうですが、チャレンジ精神は感じますね。要は、“BL”に終始しなければいいんですよ。“BL”になると、おのずと規模が小さくなり、キャスティング時にプロダクションが難色を示すから、企画自体通りにくいんです。

――「“BL”に終始しなければいい」といいますと……?

三木 例えば、俳優を作品に出すかどうか決めるとき、プロダクションが重要視しているのは“規模”なんです。上映館数が多いとか、宣伝をたくさんするとか、そこが基準になっています。我々のように規模が小さいと、“BLというジャンルの作品”になってしまい、前向きに進めてくれるところが少ないんですよ。

――なるほど。では、テレビ局や芸能事務所がBL作品を承諾しにくい理由は、「男同士の恋愛描写があるから」ではない、ということでしょうか。

三木 そうです。台本に男性同士のキスシーンがあっても、役者たちは納得して演じますからね。『窮鼠はチーズの夢を見る』は男性同士の恋愛を描いているけれど、それ以前に、実績のある行定勲監督の作品だから、「なんか世界に通用しそう!」と思わせる力がある。男性同士の恋愛をテーマにしながらも、“BL作品”の枠組みを超えているから、映画化できたんじゃないでしょうか。……じゃあ、大きな映画会社にBLの企画を通せばいいのかというと、それもまた難しい。

30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(1)
テレ東がどんどんBLドラマを開拓していきそう
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