老いゆく親と、どう向き合う?

認知症の父は「まったく怒らず、子どものよう」だと語る娘……「ムカつくけど一緒に過ごす」と決めた思い

2020/10/04 18:00
坂口鈴香(ライター)

父とバージンロードを歩きたかった

 在宅介護が7年過ぎて、ようやく義徳さんを受け入れてくれる施設が見つかった。知り合いの紹介で、隣県の特別養護老人ホームに入居できることになったのだ。そこは自宅から、高速に乗っても1時間半かかる場所だった。

 義徳さんは「施設に入る」ということがまったく理解できていないようで、入所した日、母の典子さん(仮名・63)とともに帰ろうとして、ロックされた扉を壊してしまったという。

 それは、麻美さんの結婚式1カ月前のことだった。くしくも、と言っていいのだろうか。

「父は、結婚について理解していませんでしたし、私の彼氏という認識もなかったと思います。娘の私としてはバージンロードを一緒に歩きたかったし、ウエディングドレス姿も見せてあげたかった。それまで父は家族のこともわかっていたし、身体的にも普通に生活できるレベルでしたが、これからもずっと在宅で介護するとなると限界はある。寂しい反面、ホッとしたのも正直なところです」

 認知症の父の存在は結婚の障壁にはならなかったのだろうか。酷な質問だとは思いつつも、聞いてみた。

「私と旦那さんの実家は、偶然にも徒歩1分圏内の場所にあるのですが、学区が違うので家族どうしの付き合いもなかったんです。でも父はご近所を徘徊していたので、旦那さんの実家にも頻繁に行っていたそうです。多分面識はなかったのですが、私から旦那さんを通じて話が行っていたので、旦那さんの家族は理解してくれていたようでした。ご迷惑だったとは思いますが、結婚に関しても反対されることもなく、父が施設に入ってからも、父の心配をしてくれていました」

――続きは10月11日公開

 

坂口鈴香(ライター)

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

記事一覧

最終更新:2020/10/04 18:00
老人ホームのお金と探し方 親を大切に考える子世代のための / 小嶋勝利 〔本〕
家族のことも忘れてしまう日を覚悟して生きる
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