白央篤司の「食本書評」

「韓国風なすごはん」はぜひ試して! 人気の料理研究家、重信初江のレシピ『味付けご飯とおみおつけ』

2020/09/15 18:00
白央篤司

おみおつけと味つけご飯、それぞれ1品作ってみた

 突然だが、漫画家の藤子・F・不二雄さんはSFのことをサイエンス・フィクションの略ではなく、「すこし・ふしぎ」のことだと言われていた。私は漫画にとって大事なのはちょっとした不思議感である、という意味も言われていたのではないかと考えているのだが、料理にもそのことを思う。独創的すぎず、さりとて当たり前すぎず、ほどよい意外性が大事ではないかと。「すこし・意外」が作ってみたいと思わせ、作って食べて楽しいのではないだろうか。

 そういったセンスが、重信さんのレシピ集にはあふれている。本書におさめられた味噌汁から例に挙げると、セロリと油揚げ、レタスとハム、モロヘイヤと豆腐、さつまいもとバター……食材それぞれはおなじみのものだが、味噌汁の実としての組み合わせを体験されたこと、あるだろうか。

たたきえびとオクラの味噌汁。とうもろこしも加えた

 上の写真はたたきえびとオクラの味噌汁。「とうもろこしを加えてもおいしい」とあり、やってみたら彩り豊かで、夏がきらめくようなひと椀となった。えびのほんのりした塩気とコーンの甘み、そしてオクラのぬめりのトリオの良さといったら、なかった。

「一汁一菜がシンプルで時短」という言葉が

 著者まえがきにある、この言葉を読んでほしい。

 具だくさんのごはんと汁ものの良さは、まず「おかず要らず」ということだろうか。「忙しいけれど、自炊もしたい」と願う人は少なくない。余裕のないときは、具たっぷりの汁をひとつ作って、主食はおにぎりを買ってくるのもいい。手間や洗い物も減る。「こんな組み合わせもアリなのか」という体験を重ねていくと、「これを入れてみてもOKじゃない?」なんて思いつくようになり、食材を使い切るスキルも伸びていくと私は思う。

韓国風なすご飯

 蛇足になるが、いろいろ作ってみた中で最も気に入ったのが、「韓国風なすご飯」。ゴマ油が香り、豚ひき肉のコクがしみて思わず食べすぎてしまった。本著を手に取られたらぜひ試してみてほしい。

最終更新:2020/09/15 18:00
味つけご飯とおみおつけ
米が主食の国で幸せ~