2020年上半期、米国をエンタメから読む!【後編】

TikTok「ビルボードチャートの歴史を塗り替え」BLM運動「白人セレブや企業のスタンダード刷新」エンタメから米国の“変化”を見る! 【辰巳JUNK×渡辺志保:後編】

2020/09/05 13:30
堀川樹里(ライター)

「フォートナイト」の影響力は「スーパーボウル」を超えた!?

――もうひとつ、コロナ禍の音楽業界で大きな話題となったのが、マルチプレイゲーム「フォートナイト」内で開催された、人気ラッパー、トラヴィス・スコットのバーチャルコンサート『Astronomical』(※4)ですね。

※4 ゲーム内に用意されたコンサートステージが、空から現れたゴジラのような巨大トラヴィスにより踏み潰され、楽曲ごとにフィールドが変化。アバターとして参加した1,200万人以上のユーザーは、火の雨、水中世界、宇宙空間を飛ぶというバーチャル体験を味わうことができた。このビッグイベントはすべてリモートワークにより作成された。

渡辺 今回のパンデミックで、バーチャルと音楽の融合が盛んに行われ、「まだこんな世界が残されていたんだ」というポジティブな発見もありました。その極め付きが、トラヴィスの「フォートナイト」ライブです。これまでのライブ配信、例えばアメリカの最大野外フェス「コーチェラ」などは、ユーザーが生配信中の映像を見てアーティストのパフォーマンスを楽しむだけでしたが、トラヴィスの「フォートナイト」ライブはプレイヤーがゲームの中に入って一緒になって楽しめるという点で、新しい価値観を与えました。

辰巳 「フォートナイト」でもこれまで“野外フェスを模した”有名アーティストによるバーチャルコンサートはありましたが、今回のトラヴィスは、初めから非現実なものを目指してました。最終的に観客はアバターで宇宙に連れて行かれ、光速で飛ぶという演出です。現実のまねではなく、バーチャルでしかできないことをやった。アバター参加ゆえにユーザー側も「参加した」感を味わえるので、まさに斬新なことを楽しめるイベントだったと思います。

渡辺 ネットフリックスもパンデミック後の早いタイミングで、「ネットフリックスパーティ」というGoogle Chromeの拡張機能をリリースしました。ブラウザ上でみんなが一緒の作品を見て、チャットができるという機能なのですけど。4月前半に世界規模で、みんなでビヨンセのドキュメンタリー作品『Homecoming』を見よう、という仮想パーティが行われた。このように、仮想の世界で一緒に何かをするのが、今年からはやり始めましたよね。トラヴィスのライブのように、さらに素晴らしい技術が重なって、今まで見たことない/感じたことない世界がエンタメ界にやってくるのかなと。

辰巳 『フォートナイト』の運営も、ゲーム以上の新境地プラットフォームを目指しているようです。まず人気がすさまじくて、昨年、世界的人気を誇るDJ、マシュメロが仮想ライブを開催したんですが、同時期に行われた「スーパーボウル」のハーフタイムショーでパフーマンスを行ったマルーン5より、ビルボードチャートへの影響があったともいわれている。『フォートナイト』内ではディズニーやDC、ナイキといった有名ブランドとのコラボが豊富だったり、人気映画の予告編上映イベントも行われるなど、いまやエンタメ界のパワーハウスになっています。

TikTok 最強のSNSは中国から生まれる
ちょっとフォートナイトやってみたくなった!
アクセスランキング