2020年上半期、米国をエンタメから読む!【後編】

TikTok「ビルボードチャートの歴史を塗り替え」BLM運動「白人セレブや企業のスタンダード刷新」エンタメから米国の“変化”を見る! 【辰巳JUNK×渡辺志保:後編】

2020/09/05 13:30
堀川樹里(ほりかわ・じゅり)

 NBAのスーパースター選手だったコービー・ブライアントが、13歳の次女と搭乗していたヘリコプターが墜落し、即死。その夜、開催されたグラミー賞授賞式はコービー追悼式のようになるという悲劇的なスタートを切った2020年。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大やBLMのうねりで、価値観も大きく変わった。

 そこで、昨年末に引き続き、ブラックミュージックやヒップホップに詳しいライターの渡辺志保さんと、ゴシップとカルチャーの両視点からショービズ界に斬り込むライター辰巳JUNKさんに、20年前半(1月~6月末)に起こったトピックを振り返りつつ、アメリカの“変化”について語ってもらった。

(前編はこちら:アメリカ「価値観の変化」を読む! オスカー「多様性」スーパーボウル「ジェイ・Zで人種問題回避」

TikTok発の楽曲が、ビルボードの歴史を塗り替えた!?

――今年前半は、なんといってもコロナ禍でエンタメの在り方、意味が問われました。世界中で自粛生活を求められる中、米ネットフリックスが新規有料会員を1,000万人も増やすなど、“巣ごもり系エンタメ”の強さが見られましたが、音楽業界に目を向けてみると「TikTok」人気が目を見張りますね。

渡辺志保氏 (以下、渡辺) アメリカでは今、TikTokでの楽曲の人気が、そのまま音楽チャートに直結しています。その象徴が、昨年のリル・ナズ・Xの「Old Town Road」(※3)で、歴史を変えるほどの大ヒットとなったんです。音楽ストリーミングサービス「Spotify」ではバイラル・チャートという、SNSの人気を反映したチャートがあるんですが、上位楽曲はほぼ必ずTikTokの流れでチャートインしてくる。驚くほど多種多様で、グローバルのチャートにも、日本語の曲や、インドやドイツのアーティストなども入ってる。もはや、言葉や国境の壁がないんです。

 アーティストもプロモーションの場をインスタグラムとTikTokや、よりヒップホップ色の強い「Triller」というアプリに移しているように思います。そこで「#~challenge」といったタグを使って、いかに自分の曲を使ったブームを仕掛けられるかが勝負になっている。ドレイクも自粛生活期間中に、「Toosie Slide」という曲をリリースしたのですが、「右足を上げて、左足をスライドさせる」など歌詞が振り付けの説明になっていて、MVも自宅でマスクと手袋を着用して踊っているというもの。TikTokではやらせようという意図が明確でした。トランプ大統領が、中国発のアプリで安全性に問題があるとしてTikTokの使用を禁止しようとしていますが、本当に禁止されたら音楽チャートやマーケティングなども大きく変わってくるはず。

※3 TikTokで同曲に合わせてジュースを飲む「♯YeeYeeJuice」チャレンジや、カウボーイの格好やポーズを真似る「#Yeehawchallange」が大流行。その後、マイリー・サイラスの父で、カントリーミュージシャンのビリー・レイ・サイラスが参加したリミックス版がリリースされ、幅広い世代に支持されるように。米国ビルボード・ホット100で19週連続ナンバー1という、同チャート史上最長のヒット曲となった。

――TikTokで人気となる曲の特徴は?

渡辺 インパクトのあるイントロが重要なのかなと思います。最初の4~5小節のインパクトですね。そして、ポーズのとりやすい音があること。かつ曲の長さは短めで、ダンスや動作をはめやすい構造の曲が求められていると思います。「Old Town Road」も1分53秒とめちゃくちゃ短い曲で、その短さにも驚いてしまいました。

辰巳JUNK氏 (以下、辰巳) ポップジャンルでいうと、よく言われるのはハッピーな曲ですかね。ポップ系チャートヒットもそれに合わせるように、明るくアップテンポになっています。シーン全体のはやりでもあるのでしょうけど、ドレイクの「Toosie Slide」やレディー・ガガ、デュア・リパの新アルバムなど、スターの新作がどんどん明るくなっているとBBCが報告している。アップビートの曲も増えていて、あくまでUKチャートですが、トップ20楽曲のアップテンポ具合は、ここ10年で最高を記録しました。

渡辺 アメリカでのTikTokヒット曲は踊ってナンボですから、そうなると自然にアップリフティングなビートが支持されるんでしょうね。

――明るい曲調といえば、5月29日にリリースされたレディー・ガガの新作アルバム『クロマティカ』も、ポップになったという評判が聞こえていますが、このアルバムの意図・意味をどう見ていますか?

辰巳 全体的にハッピーなアップビート。サウンドはポップだけど、歌詞の内容は非常にパーソナルなもので、性暴力の被害やメンタルの問題について書かれています。ポップな曲を展開していたキャリア初期に暴行やハラスメントを受けた彼女は、ここ数年、ダンスサウンドから離れて内面を掘り下げるようなオーセンシティな世界観になっていた。だけど、「暗い記憶とないまぜとなったポップミュージックを自分の手に取り戻す」というのが、今作の裏テーマのようです。

 「ポップを取り戻す」という意志を強く感じさせられる曲が「フリー・ウーマン」。ロックバンド「クイーン」の曲を芸名の由来にするガガは、フレディ・マーキュリーのように雄大なロックオペラみたいな歌い方をする。それを生かして、サビ(コーラス)で盛り上がりを見せる曲なんですよ。最初は歌詞も暗いのに、徐々に盛り上がっていく。そのあたりはシンガーソングライターとしてのうまさを感じます。歌詞を見ても、“例え自信がなくても、私は価値ある存在”といった自己肯定を得る内容で、ガガによると「性暴力の犠牲者」といったラベルからの解放を示す歌だそうです。最後は“ここは私のダンスフロア”だと宣言する、自分のポップサウンドを肯定するような詞になっています。

 奇抜で派手な衣装に関しても、スタイリストによると、キャリア初期は自分を守るために顔や体を隠していたけど、今回は顔も肌も見せ、ちゃんと前を見ている。前のアルバム『ジョアン』や主演映画『アリー/スター誕生』のような内省的オーガニック路線を経由したからこその境地だと思います。

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