[コラム]K-POPタテ・ヨコ・ナナメ斬り

EXOやTWICEなど続々! ONF「Sukhumvit Swimming」から繙くK-Pop「レゲエ」のこれまで 

2020/09/03 19:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

3:スカのBPMを落とした「ロックステディ」の誕生

 スカは主にジャズなどの才能に溢れた演奏家が牽引して来ましたが、BPMとしては少し速いため、60年代後半には当時アメリカで流行していたもっとテンポがゆったりしているソウルやリズムアンドブルースから影響を受けた同世代のミュージシャンたちを中心にしたRocksteady(ロックステディ)というジャンルが生まれます。ジャンル名の由来はAlton Ellisの「Rocksteady」という楽曲で歌われたダンスのスタイルからきています。

■Alton Ellis – Rocksteady (67)

 スカはBPMでいうと125前後ですが、Alton Ellisの「Rocksteady」はBPM85で、かなり遅くなっていることがわかると思います。他にもBPMが落ちた理由としては、66年の夏にジャマイカを襲った激しい熱波によりアップテンポなスカでは踊れなくなったという説、スカをリードしてきたThe Skatalitesのトロンボーン奏者Don Drummondが恋人を殺害し逮捕され、スカ自体がバッシングされるようになった説、アップテンポに疲れた説などさまざまです。

 ロックステディはバンドサイズがスカに比べて小さくなったことで管楽器の使用が減少し、音がシンプルになったことからベースラインが重要視されます。スカではベースのパートを四分音符で均等に弾きますが、ロックステディではギターリフで重ねてメロディアスで反復性のあるリフを使い、シンコペーションを強調して演奏されます。

 ルードボーイが主題の楽曲はロックステディにも引き継がれますが、アメリカ音楽の影響も大きいため恋愛やロマンスを歌う楽曲が多くみられます。
■Alton Ellis – Willow Tree (68)

 しかし、ロックステディの流行は2年ほどしか続きません。その間に、「Riddim(リディム)」(Versionともいう。英語のRhythmのパトワ語)という、曲のドラムとベースラインの伴奏部分のみを指すものが形作られます。現代で使っている言葉に言い換えると「ビート」や「トラック」にほぼ近いものと言えるでしょう。当時は、楽曲をレコーディングするにはたくさんの人数と楽器、レコーディングスタジオが必要でお金もかかり、今のように簡単に1曲を形にすることができない時代でした。

 そこで生演奏のドラムとベースラインを録音したさまざまなパターン(Riddim)に、全く別の歌詞・ボーカルを乗せ、新たな曲を作るという手法を取りました。ジャマイカ産レコードのB面には「Version」と呼ばれるA面のボーカルを抜いたインスト曲が収録されることが流行し、一般的になっていきます。

 代表的なRiddimを2つ挙げます。

1:Bob Marley & The Wailers – Hypocrites (67)

2:The Techniques – Queen Majesty (67)

Bob Marley - Live at the Record Plant '73 (CD)
思想が形骸化してメジャーになるって面白い現象
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