【連載】“買い物狂い” の散財日記 第33回

「手持ち2万」「カード破産」で諦めた6万円のジャケットが忘れられず……4カ月後に運命の再会も、美化された記憶にガッカリしたワケ

2020/07/22 21:00
千葉N子(ライター)
【星作業中】買い物コラム33回の画像1
(C)千葉N子

――2年で1,300万円以上溶かし、現在借金は●00万円の“買い物狂い”のライターが、苦しくも楽しい「散財」の日々を綴ります。

 過去の「恋」は美化されるといいますが、「服」の記憶も美化されませんか? 気に入ったけど、お値段を見て諦めた洋服。その場では諦めるものの、後日、インターネットで検索しまくり、その服が「SOLD OUT」になるまで執拗に追いかける変態。それが私です。

 たいていは買わないまま諦めるのですが、どうしても欲しかったものがありました。それは「プレシャスマイルド」というブランドのデニムジャケット。ジャケットの前開きの部分が両面ファスナーになっており、そのデザインがめちゃくちゃカッコいいのです。また、ターコイズっぽい絶妙な色味も、多くのデニムジャケットにはない雰囲気でした。

 初めてこのジャケットと出会ったのは1月の末。仙台・三越へ母の買い物に付き合って、ふら~っと入った店舗で見つけました。「初めて入った店で買う気なし」「手持ちは2万円くらい」「もちろんカード破産者」という最悪のコンディションだったため、ジャケットを見た瞬間、気に入ったものの買う気はまったくありませんでした(ジャケットは6万3,000円也)。お店の人に「試着してみてください」と言われましたが「いえ、大丈夫です!」と断り、その場を後にしたくらいです。

 しかし、それからというもの、何かあるたびにそのジャケットのことを思い出しました。「プレシャスマイルド」というブランドも知らなかったので、三越のフロアガイドから「あのへんの店だったよな?」と推測し、店を特定。そして、ジャケットを売っているオンラインストアにたどり着いたのは3月のこと。しかし、そのときにはもう、そのジャケットは売り切れていました。

 欲しいものが売り切れていると、さらに欲しくなりませんか? 私は「ラスト1点」とか「1点物」とか「売り切れ」のものにめちゃくちゃ反応する女です。もし、デニムジャケットを検索したとき、「在庫多数」と書いてあったら買わないくせに、「完売」と書いてあると、入荷待ちのボタンを押したくなる女なのです。

 私は「あああ、欲しかった……欲しかったあ……」と机をこぶしで叩き、1月に買わなかったことをめちゃくちゃ後悔しました。

 それから時は流れ……5月末。婚活用のフェミニンスカートが欲しくなった私は、仙台へと出かけました。三越を訪れたそのとき、元カレの顔が不意にチラりと頭をよぎるように、あのジャケットの記憶がよみがえりました。店舗を訪れてみたものの、もうラインナップはすっかりと変わっていました。そりゃそうだよね……4カ月もたっているし、オンラインストアでももう完売しちゃっているもの……。

 なんだか急に懐かしくなり、帰りのバスの中で「プレシャスマイルド デニムジャケット」を検索してみました。もう売っていないことはわかり切っていたのですが、どんなジャケットだったか見てみたかったのです。そのときでした。

「売ってる!!!」

 私は目を見開きました。なんと、三越のオンラインストアで記憶の中のジャケットが売っていたのです! しかもラスト1点!! 普段なら、試着もしたことのない6万3,000円のジャケットなど、絶対に買いませんが、その瞬間はもう昔好きだった人に20年越しに偶然出会えたような気分。

「これは運命だ、これを逃したらもう二度と会えない!!」

 考えるより先に、体がポチっていました。これから極貧生活になろうとも、あたしゃこのジャケットを着て、泥水すすって生きていくよ!!

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