“中学受験”に見る親と子の姿

「塾なし」のお金をかけない中学受験は成功するのか? 年収500万円前後のシングルマザーが立てた作戦とは

2020/07/25 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACからの写真

 中学受験はお金の話とセットで語られることが多い。私立中高一貫校の場合、6年間の学費は600万円超と言われ、また受験対策のための塾代が小学4〜6年生までの3年間で、200〜250万円程度になることが普通。さらに「合格切符のためなら何でもする!」とばかりに、塾のほかにプロ家庭教師を頼む家庭も別に珍しいことではなく、とにかく中学受験にはお金がかかるのである。

 こうなると、そもそも中学受験は、私立中高6年間の学費を払える裕福なご家庭のするもの、また、高額な塾代や家庭教師代にお金を回せる財力が「合格」を左右すると思われるかもしれない。確かにその傾向はあるものの、一方で「お金をかけない中学受験」という道を進む親子も稀ではないのだ。

 そういった親子は、次の3点の方法を用いて「お金をかけない中学受験」を実践しているという。

・私立ではなく公立中高一貫校を目指し、塾に通わない
・塾と私立中高一貫校の「特待制度」を利用する
・学費が安い私立中高一貫校を選び抜く(それでも年間80万円ほどはかかるが)

 シングルマザーの郁子さん(仮名)と、一人娘の由夏ちゃん(仮名)も、「お金をかけない中学受験」に挑んだ親子である。郁子さんは、由夏ちゃんがまだおなかの中にいる頃に、夫の不倫発覚により離婚。その後、夫が不倫相手と家庭を持ったところまでは把握していたらしいが、やがて離婚したらしく、今現在は音信不通ということだ。

「元夫のことは、もういいんです。最初から慰謝料も養育費も当てになんかしていませんでしたから。由夏を授かったことだけで十分です。由夏は私だけの大事な子どもですので、私が立派に育てればいいって、むしろ覚悟ができましたね」

 郁子さんは国立大学を卒業後、IT企業に就職。その後、妊娠中の離婚騒ぎというショッキングな出来事を受け、切迫早産となり、結果的に退職を選んだそうだ。それから、幼い娘を抱えながら、プログラミングの勉強をするなどしてさらにスキルを磨き、今はフリーランスのITエンジニアとして生計を立てている。

「今はいい時代になりました。元いた会社や、かつてのお客様からお仕事をいただき、ほとんどの仕事を自宅ですることができているので助かります。でも、ふんだんにお金があるわけではないので、お金をかけるところと節約するところの線引きはしっかりしているつもりです」

 娘の由夏ちゃんへの教育方針も明確だ。

「私は親に学費を払ってもらい、大学まで出してもらったので、由夏にもそうしてあげたいんです。やっぱり、自分がこうやって仕事をして自立できているのも、教育を受けられたからだと思うので……。男は裏切りますけど、仕事は裏切りませんものね(笑)」

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