マスク着用習慣がないアメリカ

ブラッド・ピット、「日本人のマスク習慣」を絶賛していた! 「なんて思いやりがあるんだろう」と語ったワケ

2020/07/08 15:58
堀川樹里(ライター)

 2019年9月、主演映画『アド・アストラ』のプロモーションのため来日したブラッド・ピットの記者会見での発言が、10カ月たった今、米英のネット上で注目を集めている。コロナ禍にあって、マスク着用の重要性を再認識させてくれる、とても重要な発言だったからだ。

 全米各地で2カ月以上に及ぶ都市封鎖や自宅待機令の判断が下されたにもかかわらず、いまだに新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないアメリカ。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)という世界最高レベルの感染症対策機関を持つのに、アメリカが感染者数も死亡者数も世界最多となってしまったのは、いまだにマスク着用の習慣が浸透していないことも一因とみられている。

 CDCは4月以降、公共の場ではマスクなどで顔を覆うよう推奨。ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事など、早い段階からマスクの着用を呼びかけていた要人もいた。しかし、アメリカではマスク着用の習慣がなく、抵抗がある人、「マスクするのは伝染病患者だから」などの偏見を持つ人が多い。ドナルド・トランプ大統領もつい最近まで、公の場でのマスク着用を避けてきた。しかし、いつまでたっても感染拡大に歯止めがかからない状況を受け、大統領も7月1日「人と接近する状況ではマスクを着用する」と表明し、テキサス州のグレッグ・アボット知事は外出時のマスク着用を義務化すると発表した。

 それでも、「マスクをつけると息苦しくなる」「個人の自由を奪うもの」「過剰反応」と反発する人が多く、スーパーやレストラン、バーの店員が、マスクをつけない客と口論になったり、銃で威嚇したり、発砲して死亡する事件も発生。どうすればマスク反対派に納得してもらえるのか、頭の痛い問題となっている。

 そんな中、米エンタメニュースサイト「Just Jared」は、昨年9月に東京で行われた映画『アド・アストラ』記者会見に出席したブラッド・ピットが、「マスク着用がなぜ大切なのか」を語る映像を紹介。

 その動画は、とある質問に対するブラッドの回答を通訳が日本人記者たちに伝えるのを待つ間、会場を眺めていたブラッドが急にほほ笑み、次の質問を受ける前に「後ろのほうに、マスクをつけている人がいるね」と、話し始めるというものだ。「初めて日本に来た時、空港でたくさんの人たちがマスクをつけているのを見て、『大げさだな』って思ったんだよ。みんな、なんでそんなに神経質なんだろう? って」と回想。

 「でも、風邪をひいている人が、周りの人たちにうつさないためにマスクをするのだと教えてもらって。『なんて思いやりがあるんだろう』って思ったんだよ」と述べ、日本人は他人への気遣いからマスクを着用しているのだと知り、感心したことを明かした。

 そして、「なんでほかの国では、マスクをしないんだろうね? なんで自分たちはそういう気配りをしないのかな? 不思議に感じるよ」としみじみ語り、「(話が脱線して)ごめんごめん」と映画の話に戻った。この時のブラッドだが、日本人へのリップサービスではなく、マスク習慣のある日本を心から素晴らしいと思っていることが伝わってくるような発言であった。

 この映像は、ここ数日の間、英メディアでも紹介されており、ネット上では「世界中で新型コロナのパンデミックが起きる前に、ブラッドがこんな発言をしていたなんて!」と、あらためて見直されている。

 「マスク着用がなぜ大事なのか、とてもわかりやすく語っている」「やっぱりマスクは重要なんだよ」「ブラッドがおすすめするのであれば、マスクをつける人が増えそうだね」など、このブラッドの発言をきっかけとして、欧米でのマスク着用アップを期待する意見が多く上がっている。

 ブラッドの元妻で女優のジェニファー・アニストンは最近、あらためてマスクの重要性を呼びかける長文をインスタグラムに投稿。「マスクはなにかと不便だし、つけ心地も悪いよね。でも企業活動が止まったり、失業する人が増えたり、医療従事者が疲弊している状況のほうが嫌じゃない?」「マスク着用によって“個人の権利が奪われること”を心配している人がいるけど、『マスクをつけよう』というシンプルで効果的な提案が、人の命も犠牲になっている中、政治問題化されている。それは議論になるべきことじゃない」と、マスク着用を強く推奨するもので、3,400万超のフォロワーを持つ彼女の投稿も、マスク着用率アップにつながるのではないかと期待されている。

 まだまだ収束の兆しすら見えない新型コロナ禍だが、世界中の人たちがマスク着用やソーシャルディスタンシング、密集度を下げる生活を送ることで、少しでもコロナ前の世界に近づくことができたらと願わずにはいられない。

堀川樹里(ライター)

堀川樹里(ライター)

6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴25年以上。

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最終更新:2020/07/08 15:58
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