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電通と政府・官僚が癒着した理由とは? 博報堂出身の作家が解説

2020/07/02 20:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

国の持続化給付金支援事業において、電通やパソナが設立していた社団法人「サービスデザイン推進協議会」が受託した事業費769億円の97%、749億円を電通に再委託し、電通はさらに自分の子会社に再々委託していたことが、東京新聞の報道で明らかになった。電通は全く同様のやり方で総務省の「マイナポイント事業」も受注していて、電通と官庁の癒着構造が、想像以上に深くなっていたことが明らかになってきた。

 この問題の発覚以来、私の所には新聞社を含む多くのメディアが取材に来たが、異口同音に「なぜ広告代理店の電通がこのような事業を受注するのか」と聞いてくる。今回はその構造を解説する。

持続化給付金でバレた中抜きシステム
 一連の報道でもっとも世間の耳目を引いたのは、なんと言っても電通の荒稼ぎぶりであった。まず、自らが設立した社団法人が受託し、そのまま電通に再委託したのだが、その際になんと20億円を差し引いていた。後に、そのうち15億円は振込手数料であると弁明したが、それを証明する書類はなく、真偽を測ることはできない。また、もしそうであったとしても、実態がなく社員数すら分からない団体が、いきなり5億円を抜いた事実は変わらない。報道各社がこれを「中抜き」と報じたため、その後はこの言葉が一気に広まった。

 「サービスデザイン推進協議会」から749億円で再委託を受けた電通は、さらにイベント領域を担当する「電通ライブ」などの子会社5社に709億円で全事業を再々委託した。この時点で、「管理・運営費」として38億円が電通本社に入っている。そして、電通の子会社は、さらにパソナ・大日本印刷・トランスコスモスなどに事業を外注(再々々委託)したが、その金額はいずれも公表されていない。

 「管理・運営費」というのは、電通や博報堂の見積もりに必ず登場するマージンのようなもので、細々とした見積もり項目を足し上げた小計金額に、電通の場合は最低20%以上を掛けて総合計金額とする。この事案で言えば749億円の20%は149億円だから、38億の中抜きは少なく見えるが、もちろんこれはトリックである。電通全体の収益は再々々委託までの間にどれくらい中抜きをしているかで計るべきで、合計すれば、恐らく限りなく20%に近い金額になるだろう。

 断っておくが、この管理・運営費というのは電通以外のすべての広告会社でも適用している概念で、それ自体は悪いものではない。だが今回は国民の税金を使った事業であり、しかも全体で1500億円にも及ぶ巨額案件の中から、電通が、いとも簡単に数十億円単位を抜き去っている事実が批判を浴びたのだ。

 電通側から見れば、あくまで彼らの商慣習の中でやっているのであり、なぜ批判を受けるのかまったく理解できていないだろうが、彼らの常識は世間の非常識である。だが、なぜ広告代理店ふぜいがこのような国家事業を受注できたのか。

電通はすでに広告会社ではない
 この件が明らかになって以来、私のところに複数の報道機関や雑誌メディアなどから取材や問い合わせが相次いだ。なぜこのような問題が起きたのかという質問と共に、多かったのは「なぜ広告代理店がこういう仕事を受注するのか」という質問だった。

 電通と言えば、2018年の連結売上高5兆3572億円(日本の会計基準に換算)で、国内2位の博報堂の売り上げ1兆4456億円を遙かに凌駕する、広告業界における巨人である。そのため、メディアでは「広告代理店大手」「広告業界最大手」などと紹介されることが多い。無論それは間違っていないのだが、実は肝心の電通自身は、もはや自らを「広告代理店」どころか「広告会社」とすら考えていないのだ。私がまだ博報堂にいたころ(15年前)もうすでに、両社は自らを「広告代理店」とは呼ばなくなっていた。

 なぜなら「代理店」という呼び名は、スポンサー企業の代理だけやっているという印象が強く、創造的な仕事をしているように聞こえないから、という理由からだったが、電通はその後、広告会社という呼び名すら名乗らなくなり、現在では「ソリューション提案企業」という概念で自らを表現することが多い。

 電通のホームページを見ると、事業内容を『「Integrated Communication Design」を事業領域としたコミュニケーション関連の統合的ソリューションの提供、経営・事業コンサルティングなど』としている。英語と横文字ばかりで分かりにくいが、ソリューションとは「解決」「回答」と言う意味の英語であり、電通はあらゆる事業分野でそのソリューション(解決策)を提供する企業である、と宣言しているのだ。そこには当然広告も入るが、紹介文には広告の文字すらない。

 今回の給付金事業は、「事業の告知」と「実際の給付」という二つの柱で成り立っている。事業告知は、全国紙・ローカル紙全紙で30段(2ページ)の告知広告が3〜4回掲載された。給付金事業は日本全国で行われる国家事業であり、その存在と実施を全国民に知らせる必要があるからだ。この広告掲載も電通が受注した。

 現在日本には70を超える新聞社があるが、その全紙に1ページの広告を掲載するだけでも、約2億円の掲載料が発生する。つまり、今回この新聞告知だけでも、7〜8億円の広告費が発生している。これはまさしく広告会社の担当領分であり、こうした広告掲載のマージンは大体15〜20%程度だから、電通にとって、これだけでも1億円を超える収入になったはずだ。

 そして昔であれば、こうした広告分野だけが電通の取り分であったのだが、現在は広告以外の事業でも積極的に受注する企業に変貌している。だから今回は、実際の給付分野も担当したのだ。

際限のない巨大化による電通の「ブラックホール化」
 この給付金事業での騒ぎが発端となり、総務省の「マイナポイント事業」でも全く同じ構図で電通に業務委託されていたことが発覚した(後述)。いったいなぜこのようなことが起きているのか。それは、とにかく事業実施を急ぎたい官庁側と、電通の何でも受注してやろうという、あくなき強欲(拡張)姿勢が見事にマッチングした事に拠っている。

 今回給付金事業は、コロナ禍の緊急事態において政府が決断したものだが、担当官庁の経産省にはこうした大規模給付の経験がなく、当然人員もいないので、最初から民間業者に任せるしかなかった。

 こうしたときに頼りになるのが、常日頃から政府系広報や事業を担当している、電通や博報堂である。彼らは大きなイベントの設営・運営経験が豊富であり、他の様々な企業との協働実績もあり、どの企業がどんな仕事を得意かよく知っている。とりわけ電通は、東京オリンピックや昨年のラグビーワルドカップなど、数万単位の人が動く巨大イベントの運営ノウハウを持っており、告知から集客、運営まで一気通貫で作業が出来る。今回の給付金事業も、全国民に告知をし、給付希望者にアクセスさせ、その人にお金を振り込むという作業は、言い換えれば巨大なイベント実施と同じなのだ。

 そして、電通は各省庁からの業務を受注するために、今回の「サービスデザイン推進協議会」のようなトンネル団体を数多く作っている。この社団法人はすでに5年前から存在していて、経産省の業務を受注してきた。そして今回初めて、総額1500億円(第二次補正予算分含む)にも上る巨額案件を受注したのだ。

 この団体に実態が無いことはすでに様々な報道で明らかだが、常日頃から官僚を接待して気脈を通じ、こうした受け皿をあらかじめ作っておいて将来の案件受注に備えておくという、ある意味投資的なやり方は、電通の独壇場だ。単年度売り上げを重視し、政官界との繋がりが薄い博報堂には、こうしたシステムを作ることさえ難しい。

 そして、こうした受注システム構築の基礎となるのが、役人の天下りである。しんぶん赤旗の報道によれば、2009年からの10年間で、11人の役職付き公務員と1人の特別国家公務員が電通に天下りしている。内訳は財務省、総務省、経産省、国土交通省、警察庁など幅広く、有名どころでは、元総務省事務次官で18年に電通に入社し、現在は電通グループ副社長の櫻井俊氏は、人気アイドルグループ「嵐」の櫻井翔の父親である。

 こうして元事務次官クラスを顧問などとして続々と雇い入れれば、彼らの出身官庁と太いパイプを作ることも容易になる。電通はそうした準備を怠らないのだ。そうして作った人脈をフルに活かし、トンネル会社を配置して電通の社名が目立たぬようにして、政府や中央官庁の業務を数多く受注してきた。だから今回の持続化給付金の一件は、あくまで氷山の一角に過ぎない。

 官にとってあまりにも便利な電通は、どんどん官庁関係の仕事を吸収し、もはやブラックホールのような存在になっている。今回の持続化給付金の件は国会で野党に厳しく追及されたが、入札資料は全て黒塗りだし、「サービスデザイン推進協議会」の過去の業務内容詳細も、すべて黒塗りで第三者はチェック出来ない。つまり、一旦委託してしまえば、どれだけの金額が中抜きされているのか、当事者以外にはまったくチェックできないのだ。これではまるで、何でも吸収するが中が見えない、巨大なブラックホールではないか。

 私は以前、農水省や厚労省の課長級に対してインタビューした際、「なぜ中央官庁の業務はデンパク(電通や博報堂)の大手に集中するのか。民業支援のためには、中堅や小さくても力のありそうな企業に任せる姿勢も大事なのではないか」と問うたことがある。

 すると彼らは異口同音に「私たちが使うのは全て国民から預かった税金だ。だから事業が失敗したり、委託した業者が途中で倒産して赤字が発生するなどの不測の事態は、絶対に避けなければならない。そうなると結局、何があっても最後まで業務を全うでき、保証力のある電通や博報堂に発注が集中してしまうのだ」と語っていた。

 さらに、官庁関係がデンパクを重宝する決定的な理由がもう一つある。それは、デンパクを指揮系統のとりまとめ役(仕切り役)にすれば、業務の異なる複数業者にいちいち説明する手間が省け、自分たちは楽ができるからだ。

 極端に言えば、事業概要を電通の担当者1人に説明して金を渡せば、あとは電通が必要なスタッフを集め、孫請け・ひ孫請けなどの組織構築を全部やってくれて、予算内で粛々と業務を遂行してくれる。その間、委託側は詳細を知らなくても事業は完遂される。今回の件が発覚し、野党による追及を受けた経産省側が、最初はこの業務の組織構造を知らず、まったく答弁できなかったことが、このことを証明している。

 官庁側のこうした「リスクを嫌い、なるべく早く業務を発注して、後はお任せにしたい姿勢」が、デンパクへの業務委託集中を生み、中でも電通の巨大化を生んでいるのだ。

総務省でも似た案件、他社排除も明らかに
 そして、経産省以外でも、電通と官庁の癒着が明らかになった。マイナンバーカードを使ってポイントを還元する総務省の「マイナポイント」事業で、一般社団法人「環境共創イニシアチブ」を通じて、一部の事業が電通に再委託されていたことが判明した。

 また、「週刊文春」(文藝春秋)6月18日発売号は、電通の「下請け圧力問題」を報じた。下請けのイベント企画会社TOW(電通を通じて給付金事業を受託)を通じ、電通の意向として、国の給付金事業などでライバルの博報堂に協力しないよう、下請けを「恫喝」していたメールを入手。その全文を本誌とネットに掲載したのだ。

 これは、電通が請け負わない中小企業庁の「家賃補助給付事業」を博報堂が受注しそう(実際はリクルートが受注した)なので、その際、電通傘下で持続化給付金事業を請け負った企業は、秘密保持の観点から博報堂と仕事をするな、と言っているもので、完全に独占禁止法に抵触するような事案である。

入札段階、途中段階、終了後の徹底的な透明化が必要
 以上のように、中央官庁と電通の癒着、もたれあいは深く、大きく進行していた。だが今回の給付金事業で中抜き体質が国会で追及されても、政府は合法との見解を繰り返すばかりだ。だが、民間同士の事業ならいざ知らず、国民の税金で行う事業で平然と巨額の中抜きが行われ、第三者が検証出来ない今の構造は、明らかにおかしい。

 官庁が今の規模を維持する限り、民間に予算を与えて事業を行う案件は、今後も増えていくだろう。それなら、入札段階からすべての業務手順をガラス張りにして、入札の公平性、事業内容と実施価格の適正を後に検証できるようにしていかなければ、国民の理解は得られない。きちんとルールを決めれば、電通もそれを守らざるを得ない。秋の臨時国会で、野党はこのルール作りを最優先にするべきだ。

最終更新:2020/07/02 20:00

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