過去には殺人未遂事件も

大物俳優マーク・ウォールバーグ、黒人男性への追悼文が大炎上! 自らのヘイトクライムには触れず、他人事のように投稿

2020/06/10 17:31
堀川樹里(ライター)
若気の至りというレベルではない

 生意気な白人ラッパー、セクシーな下着モデルというイメージを払拭して、アカデミー賞にノミネートされるほどの大物俳優へと成長したマーク・ウォールバーグ(49)。プロデューサーとしても高く評価され、ハリウッドの殿堂入りも果たしている。

 そんな彼が、先日、警察官に膝で首を押さえつけられて死亡した黒人男性ジョージ・フロイド氏への追悼文をインスタグラムに投稿した。「ジョージ・フロイド氏が殺された事件には心が痛む。この問題を解決するには、みんなが一丸となって取り組まなければならない。我々みんなのために祈る。神のご加護を」という至って常識的な文章なのだが、過去にヘイトクライム騒動を起こしたマークがいけしゃあしゃあと投稿したとあって大炎上している。

 今年3月、英紙「ガーディアン」のインタビューで、「9人兄弟の末っ子だったから、兄たちにいじめられながら育った。一歩外に出ても、暴力が全てだった」「157cm・54kgしかないチビのティーンが、大人相手に自己防御することは、楽なことじゃなかったね」と回想したマーク。

 13歳の時、兄ドニーがメンバーだった、世界的人気を誇るボーイズバンド「ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロック」に加入。数カ月で脱退したのは、頻繁に警察の世話になるような問題児で、コカインなどの薬物依存症だったからだと同紙は同情気味に報道していた。しかし、マークは大人相手に自己防御していただけでなく、子ども相手に暴行を加えることもあったという。

 警察・裁判記録やマグショットなどを掲載している米サイト「The Smoking Gun」によると、1986年6月15日、マークは同年代の友達2人とモペッド(エンジン付き自転車)で黒人の小学生をつけ回し、「おれらの地区に黒いニガーがいるなんてムカつく。この地区からとっとと去れ!」「ニガーを殺せ、ニガーを殺せ!」と叫びながら投石。侮辱的な言葉を吐きながら石を投げたのはこれが初めてではなく、教師が黒人小学生に付き添っている時も同様のことをするような常習犯だったとも記されているが、なぜか刑事事件にはならなかった。

 罪に問われなかったマークは88年4月8日、ベトナム人男性2人を「ベトナム・フ●ッキング・シット!」とののしりながら、大きな木の棒で意識不明になるまで激しく殴り、さらにもう一人のベトナム人の目を殴って失明させるという大ケガを負わせた。逮捕されたマークは、「(被害者らに加害者である自分を)確認させるまでもないよ。あいつの頭をパックリと裂いたマザーフ●ッカーは、このオレ様だ」と偉ぶり、アジア系外国人を攻撃する「グック」という単語を連呼。殺人未遂容疑で起訴され、少年自立支援施設に収容されたが、禁錮2年のところを、わずか45日で出所した。

 このベトナム人男性に対する殺人未遂事件の余波は、マークが大スターになってからもついて回り、インタビューなどでは被害者への謝罪を口にすることもある。しかし2014年、マークはマサチューセッツ赦免委員会に88年の殺人未遂事件の赦免を求める申請書を提出。「事件の被害者に心から謝罪を」とした上で、「事件以来、自分はより良い人間、市民になり、自分の子どもたち、そして人々の見本になろうと努力してきた」「慈善団体を立ち上げ、活動してきた」と説明。

 「赦免を申請するのは、決して自分の過去を忘れてもらいたいからではなく、人間は立ち直れるという良い例になりたいから」「自分を改善し、慈善活動に人生を捧げれば贖罪を受けられる、という良い例になると思う」と主張し、世間から「この事件の後も、近所の人に暴行を加えて顎の骨を折る大ケガを負わせてるし。まったく反省していない!」「白人セレブという立場を利用して罪をもみ消そうとするなんて、とんでもない男だ!」などと大バッシングが巻き起こった。

 また、マークは「ウォルバーガーズ」というハンバーガーチェーン店を国内外に展開しているが、重犯者には営業許可を出さない州もあるため、「赦免申請したのは、ビジネスのため」「金もうけしたいからだ」とも叩かれた。

 この大バッシング騒動を受け、失明した被害者男性が英紙「デイリー・メール」の取材に応じ、「失明した目はマークの暴行によるものではない。(事件前に)ベトナム戦争で失明した」「今はマークを許している。罪は償ったし、成長したしね。チャンスは与えるべきだと思うし、赦免されてもよいと思う」と語ったものの、ネット上では「マークから金をもらって、そう言わされているのだろう」といった臆測が飛び交った。

 あまりにもひどいバッシングに驚いたのか、マークは16年に出席したトロント国際映画祭で「赦免を申請したことを後悔している」と吐露。「アドバイスを受けて申請しただけ」と弁解した。この赦免申請だが、その後の手続きを行わなかったため取り下げられた。

 翌年、ベトナムのサンドイッチ「バインミー」がウォルバーガーズのメニューに加えられた時も、「ベトナム被害者らをバカにしている」「世間をナメてる」と批判を浴びた。

 マークは、06年に受けた米「ABCニュース」のインタビューで、「過去に、後悔するようなことは山ほどした」「でも、罪は償った」と明言。いつまでも殺人未遂事件について叩かれることに嫌気が差しているのだろうが、今、問題とされているのは、「黒人の小学生をニガーとののしり、石を投げた」86年の事件。黒人差別をしたことに対して反省や謝罪の言葉がないどころか、事件そのものをなかったかのようにスルーし続けているのに、「ジョージ・フロイド氏が殺された事件には心が痛む」はずがない、と大バッシングされているのだ。

 「閉じたら叩かれる」と察したのか、マークはこの投稿のコメント欄を開放し、案の定、大炎上。「不愉快だから削除しろ!」「ヘイトクライムばかりやっていたくせに、よくもこんな投稿できるね」「黒人の小学生にニガーって叫びながら石を投げた件はスルーしてるけど、なかったことにしちゃってんだろうね。本当に許せないよね」などの批判が1万5,000以上書き込まれ、収拾がつかない状態となっている。

 マーク自身も大炎上は予測できていただろうが、世界各国で人種差別抗議デモが行われている今、SNSアカウントを持つセレブが支援を表明しないとバッシングされる傾向にあるため、投稿せざるを得なかったのだろう。「自分も人種差別的犯罪者だった、反省していると書いて置けば、少しはマシだったのに」という意見があるが、他人事のように人種差別を語ったのも彼の落ち度だ。今後、このような無神経な投稿をしたことについて、どのように弁解するのかが注目されている。

堀川樹里(ライター)

堀川樹里(ライター)

6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴25年以上。

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最終更新:2020/06/10 17:31
黒人差別とアメリカ公民権運動
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