【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

ニセ天皇、米国を騒がす! 「LIFE」「ニューズウィーク」登場で、皇室は大ピンチ!【日本のアウト皇室史】

2020/06/06 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

GHQの一言で、アメリカの雑誌が熊沢天皇を掲載し……

――戦後、日本の政治形態はガラッと変わってしまいましたね。

堀江 ここでついに、熊沢寛道が歴史の表舞台に現れる時がやってきました。熊沢寛道はなんと駐日アメリカ軍のトップである、ダグラス・マッカーサーに手紙を書いて、日本を敗北させた北朝である現皇室に代わり、熊沢家による南朝の再興を請願しているのです! そして自分はその南朝の天皇にふさわしい、と。彼は「天皇の戦争責任」を追及することにしたようですね。残念ながら、あるいは当然ながら、マッカーサーおよびGHQは熊沢寛道の熱意を無視し続けました。

 ところがGHQの誰かが、来日中のアメリカの有名写真雑誌「LIFE」の記者の誰かにポロッと「天皇を自称するヤツがいるんだよ~」的な情報を漏らしてしまったようです。来日中のアメリカ人記者たちは熊沢寛道の雑貨屋を訪問、写真撮影とインタビューを試みたのでした。彼にとっては「報われた」と感じた瞬間だったことでしょう。

 「LIFE」には2ページの写真入りのインタビュー記事が載りました。ほかにも「ニューズウィーク」(1946年11月4日号)には「皇位要求者」との見出しで、熊沢天皇の記事が載りました。いずれも英文です。

 面白いことにその直後、熊沢の主張を無視し続けてきたGHQの態度が激変したのでした。熊沢のもとには、「本当にあなたは南朝の正統後継者なのか?」というGHQの使者が来訪しています。GHQは天皇の地位と伝統を戦後日本でどう扱ったらいいのかを、悩んでいました。下手すれば天皇制はなくなっていたかもしれない、皇室にとっては危機の時期ですね。GHQの中では、天皇家の交代という可能性もあった……ということですね。

 熊沢天皇のチャンスは、皇室のピンチです。皇室はどうやってこの未曾有の危機を乗り越えたのでしょうか。次回につづきます。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

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最終更新:2020/06/23 16:06
マッカーサー
戦後のゴタゴタで面白いことになってきた〜!
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