佃野デボラのホメゴロシ!

ウエンツ瑛士、「高下駄を履かされた自分」からの脱却……ロンドン留学後の活躍をホメゴロス!

2020/05/17 18:00
佃野デボラ(ライター)

テレビ・芸能ウォッチャー界のはみ出し者、佃野デボラが「下から目線」であらゆる「人」「もの」「こと」をホメゴロシます。

【今回のホメゴロシ!】ロンドン留学から“凱旋”したウエンツ瑛士、“等身大”すぎる立ち居振る舞いの妙

 2018年秋から1年半のロンドン留学を経て、今年4月に帰国したウエンツ瑛士。芸歴30年以上、バラエティ番組や音楽特番のMCという大役を任されるなど、芸能界の第一線を走り続けてきた彼だが、留学後の“等身大”の活躍ぶりがウォッチャーたちの耳目を集めている。

 まず「1年半」という留学期間が実にウエンツらしい。「本気で語学をものにするなら最低2年は必要」というのが「留学の常識」と言われる一方で、新陳代謝の激しい芸能界では2年も活動を休止したら忘却の彼方に葬られるというのが不文律だ。しかし芸能界を2年不在にして若槻千夏あたりに「おめーの席ねぇから!」と宣告されるのは御免被りたい。しかし1年では「留学してきました」と大手を振って歩けない。その間を取った「1年半」という“等身大”のチョイスが、まさにウエンツだ。

 こうした本人のふんわりとした復帰ビジョンに相反し、帰国早々テレビ業界の歓待ぶりは相当なものだった。ウエンツがかつてメインMCを務めていた『火曜サプライズ』(日本テレビ系)に、帰国前からロンドン・ライフをレポートさせるコーナーをねじ込み、帰国後は「おかえり特集」を組むなど、かなりの手厚さだ。ほかにも『おしゃれイズム』『今夜くらべてみました』(同)、『ダウンタウンなう』『ワイドナショー』(ともにフジテレビ系)など立て続けに人気バラエティ番組に出演できるとは、「芸能界随一の強大な政治力を誇る所属事務所」の威力に慄くばかりだ。他事務所のバラエティ・タレントではこうはいかないだろう。

 「ドイツ系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれながら、英語が一切しゃべれない」というバイオグラフィを、鉄板の“等身大ギャグ”としてきたウエンツにとって、此度の留学は積年の夢であり、長らくひっそりと温めてきた計画だったそう。そのために「£(ポンド)が安い時に買ってはコツコツと外貨預金をしてきた」という念の入れようだ。ならば英語のほうも、事前にレッスンを受けるなど周到に準備してから渡英したのかと思いきや、4月19日放送の『おしゃれイズム』で本人が言うには、現地の語学学校の最初のレベル分けテストにて即断で1番下のクラスにされたとのこと。ちなみに、昨年受けた「朝日新聞デジタル」の取材では「下から2番目のクラス」と語っている。こうした媒体による発言のブレも、実に“等身大”で良いではないか。

 後日談としていわく、最初の頃は、英語で意思の疎通がうまくできず、うつ状態にまで陥ったという。しかし、自らもうつを克服した過去のある長嶋一茂に電話でもらったアドバイスに従い、元気いっぱいに太陽の光を浴びることなどで症状が回復し、現地の演劇学校にも通った。「ボクの核の部分はやっぱり板の上にあるんで」と高らかに宣言するウエンツにとって、「本場の演劇を学びウェスト・エンド(ミュージカルの聖地)で舞台を踏む」ことが、この留学の最終目的だった。

 こうしてさまざまな“苦難”を乗り越え、語学と演劇の勉強に勤しんだウエンツは、渡英から約1年後の昨秋、念願叶ってロンドンで初舞台を踏む。身銭を切ってイギリス人作家に台本を書いてもらい主演した2人芝居『Misao and Eitaro』は、ウェスト・エンドの中心にある劇場ではなく、サウス・ケンジントンに位置するパブシアター「Drayton Arms Theatre」(席数約50)で行われた。SNSやイギリス演劇フリークによるブログでの評判は見当たらなかったものの、3公演(動員数約150人)のチケットがすぐに売り切れたそうだ。

できそこないの知 / ウエンツ瑛士
「芸能界とは何か」を教えてくれるウエンツ
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