女のための有名人深読み週報

ブルゾンちえみの「ヴィーガン告白」に考える、「面倒くさがられること」を受け入れる大切さ

2020/04/30 21:00
仁科友里(ライター)

「面倒くささ」こそ、ブルゾンちえみらしさ

 現在は、「ブルゾンちえみ」という名前を捨て、本名の藤原史織としてTwitterとYouTubeを開始したようだ。Twitterでは「2年前から肉を食べていない」ことを明かし、その理由として「“ベジタリアン”とか“ヴィーガン”とかはいはい、そういう系ねとカテゴライズされて面倒くさがられることを恐れ、肉を食べないことを言えずにいた。でも無理しなくていいんだ。そう思える仲間ができたこと。それが嬉しかったこと」と付け加えている。

 「肉を食べない女性芸能人」といえば、女優・浅芽陽子が思い出される。「エバラ焼き肉のたれ」のCMに出演していた浅芽だが、「私は肉を食べない」と発言したことで、降板に追い込まれる騒動が起きたのだ。芸能人が特定の思想や主義があると、スポンサー絡みで仕事に影響する恐れがある。だから、ブルゾンも公言するのを控えていたのかもしれない。芸能界を引退することで、いろいろなしがらみが解放されて、言いたいことを言える自由をかみしめているだろう。

 が、少し気になるのは「カテゴライズされて、面倒くさがられることを恐れ」という言い回しだ。つまり、ブルゾンは「あいつ、面倒くせー」と言われたくないのだろうが、この「面倒くささ」こそが、「ブルゾンちえみの“らしさ”」ではないか。

 19年2月1日放送の『アナザー・スカイ』(同)にブルゾンちえみが出演した時のこと。司会である今田耕司が「どんな30代を過ごしたいか?」と質問したところ、ブルゾンはなぜか答えられず、長いこと黙りこくり、今田が「軽く考えたら」と促したことがあった。あの沈黙の長さは結構なものだったと私は感じた。ブルゾンは自分を「真面目」と自己分析しており、だからこそ、先輩に向かって適当なことを言えないとか、視聴者の心に響くことを言おうと思って考えこんだのかもしれない。しかし、自分以外の立場、つまり今田や視聴者の目線で考えてみたら、どうだろう。ブルゾンが黙り込むことで番組が止まってしまっては、今田がブルゾンを追い込んでいるように見えなくもないので、今田もやりにくいし、視聴者も違和感を覚えるのではないか。そう考えると、ブルゾンの行動は、今田にも視聴者にも「面倒くさい」と捉えられるように思うのだ。

 裁判での証言のように「嘘をついてはいけない」わけではないのだから、適当に答えてもいいだろうし、ほかの女性ゲストが出演した回を見れば、「どんな30代を過ごしたいか?」といった質問がされることも、事前に把握できたはず。おそらくブルゾンがこうしたフリートークを苦手とするのは、自分の殻に閉じこもりがちで、周りの動きが目に入らず、ゆえに準備が足りないからではないだろうか。しかし、これは、SNSの発達により他者からの視線を気にしすぎて、自意識過剰になってしまう、そんな今どきの若い人が持つ大きな特徴の一つでもあるように感じるのだ。だからこそ、ブルゾンに対し、「私と同じだ」とシンパシーを感じ、ファンになる若者は少なくないと思う。

 ベジタリアンやヴィーガンに限らず、多数派でないものを悪く言ったり、「面倒くさい」と言う人はいる。しかし、ビジネスを伴った自己実現という観点から言うと、そういうところは、自分が第一人者として立てる場所であり、「面倒くさい」は金脈と言えるのではないだろうか。

 新型コロナウィルスの影響ですぐに留学は無理だろうが、海外に行けば、ブルゾンは自分の常識が無意味なことに気づくだろう。ブルゾンが喜んで「面倒くさい人」であることを受け入れた頃、彼女は新しい肩書で私たちの目の前に現れるのかもしれない。

仁科友里(ライター)

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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最終更新:2020/04/30 21:00
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