オンナ万引きGメン日誌

ホームレスの女装万引き犯は、鼻の頭が割れていた……「これで人生台無しよ」Gメンに漏らした過去

2020/04/25 16:00
澄江(保安員)

「備品泥棒」が増加するスーパーマーケット

 当日の現場は、都内南部に位置する総合スーパーY。商業ビルの地下にあるタイプのお店で、生鮮食品を含む食料品のほか、酒や日用品、ドラッグストアコスメなどを扱う中規模スーパーです。近くに公営ギャンブル施設があることから、職業不詳に見える怪しい方々が数多く来店されるのが特徴で、1日あたりの捕捉率が高い現場のひとつでもあります。ワンフロアの広い店内は、単純ながらも死角が多い構造で、盗ろうと思えばなんでも盗れる状況にあると言えるでしょう。この日の勤務は、午前10時から午後6時まで。バックヤードにある事務所まで入店の挨拶に伺うと、どことなく、くりぃむしちゅーの上田晋也さんに似た顔馴染みの店長が、開口一番に言いました。

「おはようございます。今日入りますので、よろしくお願いいたします」
「あ、どうも。今日はさ、出入口にあるアルコールとトイレのペーパー在庫にも注意してくれる? 出すたびに、やられちゃって、参っているの」

 トイレットペーパーの一つひとつに、店の名前が書いてある状況を見て、どこか恥ずかしさを感じるのは私だけでしょうか。一連の買い占め騒動以降、店の備品であるトイレットペーパーやアルコール液のプッシュボトルを持ち去る備品泥棒が増加しており、どの店も対応に苦慮しています。

「最近、すごく多いんですよ。なにかで固定しないと、すぐに持っていかれちゃいますよ」
「そうだよねえ。ちょっと忙しくて、すぐにはできないから、今日はよろしくね」
「承知しました。ほかに注意することは、何かございますか?」
「ああ、そうだ。今日のレース、コロナの影響で無観客なんだってさ。だから、いつもより落ち着いていると思うよ」

 この店は、レースの開催日に合わせて私たちを導入されています。この日のレースは無観客開催ということで、いつも見られる職業不詳の方々の姿は現場になく、目につくのは自粛の準備に勤しむ家族連ればかり。勤務の後半に入っても現場は落ち着いたままで、特に気になる人は見つけられず、平和な雰囲気に包まれていました。

(今日は、ないかもしれないわね)

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