知られざる女子刑務所ライフ89

究極の「3密」刑務所で感染拡大中! 元女囚が考える、コロナ問題と囚人のメンタル危機

2020/04/19 16:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

刑務所内の「3密」がいじめの原因に

 刑務所や拘置所でも新型コロナ感染が続いているようですね。もともと獄中(なか)は究極の「3密」(密閉・密集・密接)ですから、誰かがかかったら、もう感染は止まりません。まだ懲役(受刑者)の友だちもいてるので心配です。検査をちゃんとやってるとは思えない状況でこんだけ出ているんですから、実際はもっとたくさんいてるのではないでしょうか。

 今頃はもう、みんな疑心暗鬼と違いますかね。ちょっとしたせきとかでもイジメに遭いますね、絶対。もともと、そうゆう世界なんです。

 そんなことを編集者さんにお話ししたら、「ムショでおならと便臭が臭すぎて暴行事件が起こったそうです」と教えてもらいました。アメリカの刑務所で、「おならと便臭が臭すぎる」と注意された懲役が、注意した相手をボコって、鼻の骨と肋骨3本を折る重傷を負わせたそうですよ。ケガをした人には悪いけど、大笑いさせてもらいました。

 記事によると、加害者は「した後」にすぐ流さなかったそうで、最低です。救いようがないバカですね。これは女子刑務所でも大問題です。でも、夜中に盛大に流すと、またいじめられるし、いじめのネタは尽きません。

 本当にちょっとしたことで、ケンカやいじめが起こるんです。女子ですから、さすがに骨を折るようなケガはさせませんが、陰湿ないじめは多いです。これも何度も書いてますけど。

 お風呂も毎日は入れないし、ちょっとでも臭いと「ヨゴレ」とか言われますし。生まれつきワキガや足クサのコとかもかわいそうでした。狭い空間ですから、仕方ないといえば仕方ないのですが、今は懲役も減っているので、法務省も「3密」解消をがんばってほしいです。

 そんな思いをしたくなければ、悪いことをしなければええ……と言われるでしょうね。ほんまそのとおりです。私もめっちゃ反省しています。でも、懲役に行っているコたちも、悪いことをしたくてしているコは少なくて、いろいろ悩んでいるんですよ。子どもの頃に愛されなかったり、虐待を受けたりすると、考え方も悪くなってしまうんです。そういうところもわかってもらえたらなと思います。

「ムショでマスクづくり」はとてもいいアイデア

 刑務作業でマスクを作り始めたというニュースもありますね。ぶっちゃけ刑務作業にはしょうもないものも多いんですが、これは世の中の役に立つからええですね。布マスクは縫うのにミシンを使うので、覚えてソンはないです。個人的にも、ミシンはシャバで役に立ちました。息子たちの祭り用の法被とか、たくさん縫っています。

 ちなみにタイでは、「コロナで仕事がなくなった」20歳の男性が、ヤーバー(覚醒剤の錠剤)を持って自首した……と記事になっていました。行くところがないからムショにゆうことですね。これはもう複雑すぎてコメントできませんね。「さすがタイやなー」としか(笑)。

 いずれにしろ、早くコロナ騒動は収まってほしいですね。皆さんもお気をつけてー。

中野瑠美改め瑠壬(作家)

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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最終更新:2020/04/19 16:00
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