[連載]白央篤司の「食本書評」

『おいしく食べる食材の手帖』書評:沸騰湯NGの野菜9種は? レシピの読解力がアップする快い1冊

2020/04/09 19:00
白央篤司

時短、カンタン、ヘルシー、がっつり…… 世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本(食本)を、 フードライター白央篤司が1冊選んで、料理を実践しつつご紹介!

『おいしく食べる食材の手帖』(野崎洋光・著、小春あや・イラスト、池田書店) 1300円(税別) 2019年6月25日発行 A5判変形

 キュウリ1本、トマト1個を買うにしても、たくさん陳列されたものの中から「より良いものを選べたら」と思う人は多いだろう。どう選ぶかのポイントをはじめ、下処理が必要なものはその適した方法、調理する際や保存のコツなどがわかりやすくまとめられている本、『おいしく食べる 食材の手帖』を今月はご紹介したい。一般的によく使われる野菜30点とキノコ類、肉、卵、魚介、米、そして基本的な調味料とだし素材についての解説がなされる。

 この手の本は一冊キッチンに置いておくと、何かにつけ便利。横15cm×縦18.5cm、コンパクトでキッチンに置きやすいサイズなのも魅力だ。

 解説者は料理人の野崎洋光さん。東京・南麻布の日本料理店「分とく山」の総料理長で、料理番組などでもおなじみ。板前さんの解説なんていうと「小難しそう……」と思われるかもだが、野崎さんの語り口は実にとっつきやすくて、わかりやすい。

 ただ食材の特徴を解説するだけの本じゃない。野崎さんは料理人生活40年以上のベテラン。彼が学び、培ってきた食材それぞれの個性を生かすポイントが最大の読みどころだ。

 「ほうれん草は熱湯でゆでる」けれど「小松菜はぐらぐら湯はだめ」なんて違い、私は知らなかった。「沸騰湯でゆでてはいけない野菜」が9種類紹介されているが、うーん……お恥ずかしい、そこに気をかけたことはなかったな。

 他に「ゆでたら水にとる野菜ととらない野菜」とその理由、「野菜の縦、横の切り分け(の意味)」「煮るときフタをする野菜としない野菜」など、覚えて損はない情報が続く。「知らなかった……!」という感情が続き、まさに目からウロコ、知識が新陳代謝するようで快いものだ。

おいしく食べる 食材の手帖