[コラム]K-POPタテ・ヨコ・ナナメ斬り

NCT127から紐解くK-POPとBig beat/Digital Rockジャンル――The Prodigy・80KIDZほか18曲

2020/04/03 19:00
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――毎月リリースされるK-POPの楽曲。それらを楽しみ尽くす“視点”を、さまざまなジャンルのDJを経て現在はK-POPのクラブイベントを主宰するe_e_li_c_a氏がレクチャー。3月にリリースされた曲から[いま聞くべき曲]を紹介します!

今月の1曲 ‖ NCT127 엔시티 127 – 영웅 (英雄; Kick It)

 SM Entertainment所属、NCT127の「영웅(英雄; Kick It)」です。この曲の収録されているアルバム『Neo Zone』が本当に傑作で、収録曲を1曲ずつ紹介したいぐらいなのですが、今回はあまり馴染みがないであろう、同曲のメインとなっているジャンル「Big Beat」や「Digital Rock」について解説していきたいと思います。

 まずは「英雄」について少し解説します。曲の全体的な印象としては今回紹介するBig BeatやDigital Rock、はたまたNu MetalやRap Metal(日本ではMixture Rockと呼ばれる)ですが、ビートはTrapがメインになっているため完全にBig Beat、Digital Rockとは言えないかもしれません。また2:55~の8小節は以前紹介したJukeが取り入れられたりしていて、さまざまな要素がたくさん詰め込まれた1曲です。

 さて、Big beat/Digital Rockについてですが、厳密にいうとこの2つはまったく同じものではありません。先にDigital Rockについて説明すると、90年代に日本の音楽誌上で流行した用語で、一般的には「デジロック」などと言われます。Hip-hopの「ミドルスクール」と同様に、基本的には日本でしか使われない呼称です。先程挙げたMixture Rock(ミクスチャー)も同じような立ち位置で、日本では呼称があるけれど、それ以外では一般的ではない括りの一つです。

 なのでBig beatに括られるような曲はもちろん、Big beatには入らないようなもっとRock/Punk寄りの楽曲もデジロックに括られることもあります。個人的にはデジロックはロックがベースで、そこに電子音が入るものというイメージです。

■80KIDZ – Hide

Big beatとは?

 Big beatについては説明がかなり長くなりますが、簡潔に言うとヘビーで歪んだブレイクビーツにシンセやFunk、Soul、Jazz、Rockなどの楽曲をサンプリングしループしたものを使う、BPM100~140ぐらいのエレクトロニック・ミュージック……ですが、この説明でピンとくる方はあまりいないと思うので順を追って説明していきます。

 まずBig beatという単語についてですが、1989年イギリスのElectronicデュオ「Big Bang」のIain Williamsがロンドンの雑誌「Metropolitan」でのインタビューで、自分たちの楽曲スタイルを表現するのに「Big beat」というフレーズを使ったのが初めてと言われています。この曲がリリースされた際のインタビューですが、楽曲はABBAの「Voulez Vous」という曲をアラビック調に(今で言う)Remixしたものです。

■Big Bang – Voulez Vous

 90年代に入り、イギリスのレイヴ、クラブシーンではBritish Hip-hop、Chillout、Ambientなどのジャンルがはやっており、そこにTrip hopやBreakbeatなどのサブジャンルが登場しました。92年に、のちのThe Chemical BrothersとなるTom RowlandsとEd Simonsの2人はマンチェスターのNaked Under LeatherというクラブでDJを始め、彼らはHip-hopやTechno、Houseをプレイしていましたが、自分たちが持っているインストHip-hop(トラックだけでラップなどが乗っていないもの)をかけつくしてしまったため自分たちで作ることにします。

■The Dust Brothers – Chemical Beats (Extended Mix)

 この、ドラムがずーっと同じパターンでループされているのをブレイクビーツ(詳細は8月の記事)と呼びますが、そこにビキビキなシンセのサウンドを乗せたり、まさにタイトル通りChemicalな雰囲気の感じられる楽曲です。彼らは最初「The Dust Brothers」というユニット名で活動していましたが、アメリカに同名のグループがいたため、この楽曲の「Chemical」を取り、「The Chemical Brothers」という名前になります。

 一方で、90年に結成したThe Prodigyは80年代後半からイギリスで爆発的に広がったレイヴシーンから影響を受けていました。Acid HouseやTechnoといった音楽、エクスタシーなどのドラッグの流行により、若者が今までのナイトクラブになかった新しい音楽やパーティ経験を求めるようになると、倉庫や郊外の廃屋、屋外を利用して一回限りのイベントが行われるようになり、それは「Revolution Live」からの造語でRave(レイヴ)と呼ばれました。91年にリリースされたThe Prodigyのデビューシングル、「Charly」はレイヴ・アンセム(定番曲)と言われ、UK Single Chartでも3位になります。この曲もブレイクビーツとシンセの印象的な楽曲です。

■The Prodigy – Charly

 巨大化したレイヴはドラッグ汚染などがイギリス政府に問題視され、94年にはクリミナル・ジャスティス法(レイヴ禁止法とも呼ぶ)によりレイヴが非合法化されます。それをきっかけにレイヴは政府公認の大規模な商業イベントとアンダーグラウンドなクラブシーンへと二分化して行きます。

 レイヴカルチャーが彼らの考えるものとは乖離してきていることに幻滅し、94年にリリースされたアルバムはレイヴサウンドから距離を置いたブレイクビーツ、Hip-hopやAlternative Rockの融合したものとなります。

■The Prodigy – Poison

■The Prodigy – Voodoo People

 「Poison」はHip-Hop要素が強いながらもビキビキとしたシンセなどは顕在で、「Voodoo People」は私が以前紹介したサイケトランスの源流を感じます。

 95年にはブライトンのConcorde clubにて、のちのFatboy SlimとなるNorman CookとDamien Harrisが「The Big Beat Boutique」というクラブイベントを始めます。この名前が人気を博し、「Big beat」というフレーズが広まっていきます。今まで名前を挙げたThe Chemical Brothers、The Prodigy、Fatboy Slimはイギリス出身ですが、 イギリスだけではなくアメリカのチャートの上位にもランクインし、Junkie XL、The Crystal Method、Propellerheadsなどのフォロワーを生み、99年に公開された『The Matrix(マトリックス)』という映画のサウンドトラックとしてThe ProdigyやPropellerheadsの楽曲が採用され、そのサウンドトラックはプラチナディスク認定され商業的にも成功を収めます。

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