『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』東京には何かがある「夢と涙の六本木 ~モモとチャムの上京物語~」

2020/03/30 16:04
石徹白未亜(ライター)
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月29日の放送は「夢と涙の六本木 ~モモとチャムの上京物語~」。

あらすじ

 夜の六本木で働くために上京した二人の19歳女性。香川から上京し、ダンサーとして働くため祖父の家で暮らすモモ。家族仲は良好だが、小・中学校でいじめられたことがあり、コミュニケーションに苦手意識がある。職場のショーホールでも「ぼっち」でいることが多く、午前1時に閉店してからも店で始発を待つことすら気まずく、遠くのファミレスまで夜の街を歩く。そんなモモに先輩のしおりが声をかける。

 もう一人の主人公は栃木から上京したチャム。両親が幼い頃に離婚し、母親が家を出ていた時期もあり「自分は母に捨てられた」という思いを抱えている。チャムは中学の時から家に帰らず、年齢を偽りキャバクラで働き、友達の家で過ごしていた。指にある入れ墨のために普通の飲食店では働けず、六本木で働く。しかし母親とのわだかまりを解消しないと前に進めないと栃木へ帰省するが……。

上京したての若者の孤独――自分以外が皆、華やかに見える

 モモははいじめに遭った過去があり、就職先のショーホールでもなかなか人の輪に入れない。『ザ・ノンフィクション』ではこういった居場所のない若者に対し、世話焼きの気のいい先輩が出てくるケースが多いが、今回のしおりもいい先輩だった。しおり自身も宮城から上京している。

 しおりは「このままいったときに(モモは)誰にも何も聞けなくなったりとか、自分が行き詰まったときに誰も味方してくれないということになりかねない」とモモを案じる。しおりは聞き上手で、モモの話をうんうん、とただ聞いていた。しおりの包容力を前に、モモはいじめられた過去や、部活動などもしておらず、先輩に対して何が失礼かどうかもわからず輪には入れない、一緒に暮らすおじいちゃんにも香川の友達や家族にも心配かけるから言えなかった、と気持ちを涙ながらに吐露していく。そんなモモの話をしおりは聞きつつ「自分から距離をつくることは相手も近づいてはくれないから」と金言を繰り出す。その後番組の最後では同僚と笑顔で会話するモモの姿が見られた。しおりのような知り合いが私も欲しい。

 就業や就学で上京したての若者の孤独感は独特だ。「若者=生きてるだけで楽しい青春の日々」というイメージだけはあるが、現実はどうってことのない日々が続く人の方が多いはずだ。しかし「若者=青春」の華やかなイメージだけはあるので、周りの若者は皆要領よく楽しそうに華やかに過ごしているのになぜ自分だけ冴えないのだろう、こんなはずでは、と焦燥感を募らせる人もいるはずだし、私自身そういう若者だった。

 今だとSNSで他人のリア充ぶりがこれでもかと目に入ってくるので、今の若者の孤独や焦燥感は10年前の若者より強いかもしれない。しかし、いじけているだけではしおりの言う通り、相手も近づいてくれないのだ。まずは居場所をつくるスタートを切れたモモを見て安心した。

ここは退屈迎えに来て
東京生まれ育ちの人はどう見たんだろう?
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