女のための有名人深読み週報

「杏と唐田どちらが好き?」という質問を絶賛――『とくダネ!』と小倉智昭に危惧すること

2020/03/19 21:00
仁科友里(ライター)
『とくダネ!』(フジテレビ系)公式サイトより

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「芸能史上に残ります」小倉智昭
『とくダネ!』(フジテレビ系、3月18日)

 会ったこともない芸能人について、ああだこうだ書くことを小商いにしている私が芸能ニュースに望むこと、それは「ちょっと笑える要素」があってほしいということだ。私の中で「不倫」というのは、芸能ニュースとして最適の部類に入るのかもしれない。なぜなら日本には姦通罪はないため、警察のお世話になる案件ではなく、また人命が失われるわけでもなく安心してネタにできる、そして「ちょっと笑えるポイント」に事欠かないからだ。

 「週刊文春」(文藝春秋)が、女優・鈴木杏樹と新派の俳優・喜多村緑郎の不倫を報じたが、2人は千葉の海岸でデートをし、ラブホテルで休憩したという。名の知れた芸能人がお安いラブホテルに行くというのが「ちょっと笑える要素」であり、こういう部分があると、ネタにしやすいし、沈静化するのも早いように感じている。しかし、俳優・東出昌大の不倫のように、「笑える要素ゼロ」の不倫は、私にとっては好ましくない芸能ニュースだ。女優・杏の妊娠中から不倫を始め、結婚生活5年のうち不倫は約3年、お相手の女優・唐田えりかはSNSで匂わせを連発と、「笑える要素ゼロ」。女性をイラつかせる要素を全部詰め込んだかのような不倫は、バッシングが過熱しやすい。事実、不倫発覚後2カ月近く経過したものの、テレビも週刊誌もSNSも、この話題で持ちきりだ。

SNSで変わったワイドショーと週刊誌

 昔は芸能人の不倫スキャンダルを報じるのは、週刊誌とテレビだけだった。週刊誌は1週間もすれば店頭から消えるし、ワイドショーも週刊誌から提供されるネタだけで番組を作り続けるのには限度がある。不倫のニュースも2~3日くらいで終息していたように記憶している。

 しかし、SNSの出現で、ワイドショーも変わった。テレビはSNSの反応を視聴者の意見とみなし、既存の情報とからめて、視聴者の反応をテレビで取り上げることにより、同じ話題を引っ張ることをし始めた。視聴者の意見に対し、さらに芸能人のコメンテーターがコメントし、それがネットニュースになり、そこに視聴者がまた反応する。こうなると、ニュースは延々と続き、「悪いことをした人」は、ずっと責められることになる。

 一方でSNSによって週刊誌は変わったのだろうか。東出の不倫を最初に報じた「文春」は、唐田や東出の言い分を続報した。この話題に読者が食いつくと踏んだのかもしれないが、これは小室哲哉氏の時と同じ轍を踏まないための「文春」側の“防御”ではないかと、私は勝手に感じている。

 2018年、「文春」が音楽プロデューサー・小室氏の不倫を報じた。くも膜下出血による後遺症で療養中のKEIKOという妻がありながら、看護師の女性を家に招き入れていたのだ。SNSでは激しいバッシングが起きるが、小室氏は会見を開き、妻の介護疲れから女性看護師に癒やしを求めたこと、また、男性としての機能を失っているので不倫ではないことを告白。しかし、騒動のけじめとして引退を発表する。この時に、介護に疲れた小室氏に同情の声が起こり、「『文春』が小室を引退に追い込んだ」「週刊誌にそこまでする権利があるのか」という怒りの声がSNS上に上がった。バッシングの矛先が小室氏から「文春」に変わったのだ。

 この経験から、「文春」は騒動の登場人物全てに焦点を当て、バランスを取ることで、1人だけを追い込みすぎることを避けようとしたのではないだろうか。例えば唐田は、先輩である杏に対し、不倫を匂わせる行為を連発するしたたかな女性という印象を持つ人も多いだろうが、「文春」は、唐田が東出と別れようと葛藤していたことも記事にしている。この記事を読んだからといって、唐田のイメージが回復することはないだろうが、「そこまで悪い子でもない」という印象を受ける人は多いだろう。また「文春」は東出にも直撃取材を行い、「いま、自分は自分の過ちから、かけがえのない日々を失ったことを実感しています」という本人のコメントを引き出した。唐田の記事同様、この発言があっても東出のイメージは地に落ちたままだが、「不倫を悔いている」というスタンスを見せることで、世間のバッシングが過熱するのを抑えた可能性はあるだろう。

 東出や唐田を追い込みすぎると、「文春」自体が批判にさらされるから、東出や唐田の言い分も掲載した……これは私の臆測に過ぎないが、杏にダメージを与えた側の言い分も掲載するというのは、「機会を均等に与える」という意味で公平なのである。

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