「古めかしい」との声も

蜷川実花Netflixドラマ『FOLLOWERS』が賛否両論! 映画評論家が「愚劣の極み」と痛烈に批判するワケ

2020/03/13 11:35
飛田芹香

ヒロイン・リミはツッコミどころ満載? 映画評論家の見解は

 蜷川の映画デビュー作から見続けてきた映画評論家のモルモット吉田氏も、『FOLLOWERS』に対し懐疑的だと語る。本作には、リミのパートとは別に、売れない駆け出しの女優だったものの、SNSによって一躍脚光を浴びる百田なつめ(池田エライザ)、人気YouTuberの野間ヒラク(上杉柊平)を中心とした今どきの若者たちの姿も描かれており、「そのパートは、台詞が陳腐でも、彼女たちが躍動することで、それなりに見ていられます」というが、「リミのパートは愚劣の極み。蜷川本人がモデルとのことですが、自分をさらけ出したキャラクターになっているわけでもなく中途半端」と厳しい目を向ける。

 吉田氏の批判は、劇中で描かれるリミの言動にも及ぶ。リミには、ゆる子(金子ノブアキ)という仕事上の有能なパートナーがいる。ゲイであるゆる子は、恋人からプロポーズされ、ニューヨークに生活拠点を移そうと誘われるが、リミを一人にさせられないという思いから断ってしまう。しかしリミは事情を知り、ゆる子を送り出すという展開になるのだが……。

「ゆる子を恋人のもとへ行かせて悦に入っていたリミが、ゆる子の代わりに採用した新人男性たちを『使えない』と愚痴る場面がありました。こうした態度は採用者である自覚に欠けています。でも、そもそも採用面接のシーンなんてないわけですよ。また、乳児である自分の息子を海外ロケに連れて行ったところ、現地で病気になってしまい、仕事に穴をあける場面もありましたが、『おカネを持ってるんだから、シッターを雇えばいいのに』って思いません? でも、ヒロインの無自覚さ、無責任さは決して描かれない」

 ツッコミどころ満載のキャラクターにもかかわらず、劇中でそれがスルーされてしまうことで、「物語に入り込めない」視聴者を生む可能性はあるだろう。

 また、吉田氏は、劇中に登場する映画や音楽のセレクトにも首をかしげる。本作では、昨年、監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』が世界的ヒットとなった「クエンティン・タランティーノ」が物語の核となる。なつめとヒラクは共にタランティーノファンであることから仲を深め、のちに自主映画製作に取り組み、「PFF(ぴあフィルムフェスティバル)」に作品を応募しようとする。また実際に、タランティーノ作品のオマージュも随所にちりばめられているのだ。

「タランティーノといっても、『パルプ・フィクション』(1994)や『キル・ビル』(Vol.1/2003)のイメージで止まっているし、自主映画といえば『PFF』とか、現代の話としては古めかしい。音楽もSUPERCARやEGO-WRAPPIN’が使われていて、78年生まれの自分の世代的には、懐かしくて良かったんですが、これなら『全裸監督』の舞台が80年代だったみたいに、『FOLLOWERS』の舞台も90年代の東京にして見てみたかったですね」

 なお、全話を通して繰り返し東京タワーが登場するのも、「古めかしい」とネット上で指摘されているが、この「東京タワー」の意味について、吉田氏は次のように語る。

「東京のシンボルという意味と、男性器のシンボルを兼ねているんでしょうね。それぐらいわかりやすい意味だと思いますよ(笑)」

 本作のキャッチコピーは、「女を理由に、諦めなかった女たちがいる。」。吉田氏の言うように、蜷川が東京タワーを男性器のシンボルとして捉えていたならば、「女を理由に、諦めなかった女」とは、つまり「男根を持つ女」という意味なのかと深読みしてしまう。いずれにしても昭和・平成の遺物には変わりはないだろう。
(飛田芹香)

最終更新:2020/03/13 11:48
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