「ゆめこどもクリニック伊賀」院長・加納友環先生インタビュー【後編】

反ワクチン、脱ステロイド――「自然派ママ」はなぜ生まれる? 小児科医が「孤育て」という背景を語る

2020/03/08 16:00
「ゆめこどもクリニック伊賀」院長・加納友環先生
candy_designさんによる写真ACからの写真

 昨今SNSを騒がせている自然派育児の炎上。今回、「パパ小児科医(ぱぱしょー)」の名前で、育児情報サイト「ぱぱしょー.com」を運営し、Twitterやインスタグラムでも情報発信を行っている三重県伊賀市小田町「ゆめこどもクリニック伊賀」院長で小児科医の加納友環先生にインタビューを行い、前編では、自然派育児にまつわる炎上をどのように見ているのかをお聞きした。後編では、なぜ根拠のない情報を信じて拡散してしまう自然派ママが生まれてしまうのか、その背景について考察してもらった。

(前編はこちら)

母親が「反ワクチン」「脱ステロイド」に走るワケ

 小児科分野においては、感染症予防のワクチン、主にアトピー性皮膚炎に用いられるステロイドをめぐって「不安感」を覚える母親は多いようだ。

「ワクチンに関しては、『同時接種』に不安を抱かれる方は多いですね。約10年前にヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンが承認されたのですが、これらを含むワクチンの同時接種後の死亡事例が報道され、不安が広がったこともありました。その後の調査で、同時接種と1本ずつでの接種で、副反応リスクに違いはあまりないことがわかり、現在では同時接種が推奨されるようになっています」

 その他、ワクチンの副反応には、「注射した部位が赤く腫れる」「発熱」などがあるが、「それをネットで調べると、不安を煽るような怖い情報がたくさん出てきて、『ワクチンは良くない』『わが子に打たせてはいけない』という考えが強化されてしまう方はいらっしゃると思います」。

 また、ステロイドに関しては、「90年代前半に『ニュースステーション』(テレビ朝日系)で、『ステロイドは体に悪い』といった企画が放送され、一気に不安が広がり、それが今も根強く残っている印象。『ステロイドを塗ると体に毒素が溜まる』など、不安を煽る過激な表現も目にしますし、とても問題だと思っています」と加納先生。

「ステロイドを使わない『脱ステロイド』の考えは、サプリやスキンケア用品の販売など、悪意のあるなしにかかわらず、ビジネス利用されている現状も。実際に診療現場で、『脱ステロイド』を謳う、内容のよくわからない高額な塗り薬を使用しているという患者さんにお会いしたことがあります」

 なお、脱ステロイド療法として、かつて注目を浴びた「超酸性水療法(雑菌による炎症を抑える目的で、全身に酸性の水を吹きかける)」は、「民間療法の一つであり、標準治療ではない」という。

「昔は、標準治療をしていてもアトピーがなかなか治らないケースがあり、『ステロイドが悪い』『ステロイドのせいでさらに悪化した』と思い込む方が多かったのかもしれません。しかし今では、標準治療でよくなるケースが多いということがわかっています」

小児科診療ガイドライン〈第4版〉 ─最新の診療指針─
いろいろな考えに触れることが大事だね
アクセスランキング