老いゆく親と、どう向き合う?

「お金を払うのがイヤ?」母の死後、伯母から不可解な“金銭要求”――一族に入った亀裂

2020/02/23 19:00
坂口鈴香(ライター)

“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)

 そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。

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ATOHSさんによる写真ACからの写真

 浅倉貴代さん(仮名・37)は5年前にまだ50代だった母親を亡くした。「女が強い家系」だったので、いつも一緒に行動していた祖母や伯母、従姉たちの悲しみは大きかった。

 母親を早く亡くした浅倉さんに、伯母はそれまで母親がしてくれていたように、浅倉さんの娘たちを預かったり、夕食を差し入れてくれたりしていたのだが、母親の三回忌を過ぎたころから変化が訪れる。祖母の別荘をそれまでと同じように使っていた浅倉さんに、伯母が浅倉さんの母親が支払っていた別荘の維持管理費を、これからは浅倉さんが払うように命じたのだ。

(前編はこちら:「母の死で変わってしまったもの」

母を支配していた伯母

 浅倉さんは面食らった。母親が祖母の別荘の維持管理費を払ってくれていたことは、まったく知らなかったし、そもそも伯母や母親がお金の話などしたこともなかったからだ。

「はっきり言って、子どものころから何不自由ない生活を送ってきたんです。それが今ごろになって、別荘の管理費や修繕積立金に毎月10万円近くかかっていると言われても……」

 浅倉さんの話から推測すると、祖母が所有している別荘というのは、バブルのころ相次いで建てられた温泉付きのリゾートマンションのようだ。バブルがはじけたあと、維持するのが大変で多くの空き室が出るようになった。残った持ち主もランニングコストの高さを持て余していたが、売ろうとしても売れないというジレンマがあるようだった。浅倉さんの祖母や伯母も、そんな厳しい現実に直面していたのかもしれない。

 そんな事情などみじんも知らなかった浅倉さんは、母親が亡くなった後も今までと同じように別荘を気軽に利用していたというわけだ。

「すると、だんだん見えてきたんです。伯母と母との関係が……。伯母は姉として、妹である母のことを支配していた。ときには便利に使ったりすることもあったんじゃないかって。母は伯母に反抗することもなく、一族の関係にヒビが入らないように、うまく受け止めてくれていた。そんな姉妹の関係がずっと続いていたんだな、と。母が亡くなると、祖母のこれからを考えるのは伯母一人になります。そんな不安とかいら立ちが、私に向かってきたように感じました」

兄との関係も変わった

 女系家族といいながら、浅倉さんには兄がいる。だが、これまで兄との関係は決して良好だったわけではない。

「兄は早くに結婚して、年上のお嫁さんの言いなり。お嫁さんのこともあまり好きになれなくて、なんとなく遠ざけていました。旅行なんかも一族の女ばかりで行ったほうが楽しいので、兄はいないようなものでした」

 それが、伯母との関係がぎくしゃくしだしてからは、兄と連絡を取るようになったという。

「別荘の件でも兄と話し合いました。伯母はきっと兄にもお金のことを言ったんじゃないかと思ったんですが、やはりそうでした。私も兄も別荘に子連れで行って、どこか壊されたとか汚されたと言われるのがイヤで、泊まりに行くのをやめたんですが、そうしたら今度は『お金を払わないといけないから使わないのか』と嫌味を言われました。もう私も兄も伯母とかかわるのが面倒くさくなって、伯母が要求した以上の金額を払って、別荘にも行かないようにしました。母が払っていたというのも、どこまで本当のことかわからないですし、お金だけ払って使わないのももったいないけれど、これ以上イヤな思いをしたくなくて」

 母親は浅倉さんには何も言わなかったが、これまで伯母の指示は母親が一人で受け止めてくれていた。それが母がいなくなって、浅倉さんや兄に直接入ってくるようになったのだ。あらためて、母親の不在が身に沁みている。

お金の悪魔
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