『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』不良少女を怒り、叱るという意味『モモコと熱血和尚 おじさん、ありがとう』

2020/02/03 18:35
石徹白未亜(ライター)

根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。2月2日放送のテーマは『モモコと熱血和尚 おじさん、ありがとう』。家出や反抗を繰り返す中学生、モモコが“熱血和尚”の廣中邦充さんの元で再生するまでを追う。そして、廣中さんと妻・待子さんの人生について。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 愛知県岡崎市にある「平成の駆け込み寺」こと西居院の住職、廣中邦充さんは、非行、虐待、いじめ、引きこもり、薬物依存といったさまざまな事情から親元で暮らせない子どもを、無償で引き取り、更生させてきた。その数20年で1,000人以上。

 九州からやってきた中学2年生のモモコも寺に引き取られる。モモコは親に対しては反抗的な態度をとり、家の壁を殴って壊したりもするが、寺では人懐っこく、勉強にも積極的に取り組むなど一見問題なさそうに過ごす。しかし、休日のたびに派手に化粧をして町に繰り出し、男に自分から声をかける生活を送っていた。モモコが無断で外泊し、廣中さんや寺のほかの子どもたちは方々を探し回る。その後、親によって見つけられたモモコは両親とともに寺に現れ、廣中さんや寺の子どもたち、さらにそれまでモモコにあまり時間を割かなかった父親にも叱られたことで、ようやく変わるきっかけをつかむ。

 廣中さんは2012年にステージ4の肺がんが見つかり、治療をしながらその後も精力的に講演活動を続けるが、17年にがんが脳に転移。19年4月、妻、待子さんや多くの寺の子どもたちに看取られ69歳の生涯を終える。

「誰もてめぇのこと信じなくなるぞ!」という怒り

 廣中さんを主役にした『ザ・ノンフィクション』シリーズは、「おじさん、ありがとう ~ショウとタクマと熱血和尚~」として昨年も放送されている

 この回では、改造学ランなど昭和の雰囲気を色濃く残した古風なヤンキー・ショウが、生気のないヤンキー・タクマの無断外泊に対し、ものすごく怒り、叱っていた。そして今回も、一見明るくソツなく振る舞いながら、町に繰り出し男に声をかけ、挙句に無断外泊するなど危うい行動をとるモモコに対し、寺の先輩格であるマヤは胸ぐらをつかみ「誰もてめぇのこと信じなくなるぞ!」と真剣に怒っていた。モモコは廣中さんにも親にも叱られていたが、姉のような存在であるマヤが叱ったことも効いたのではないだろうか。この寺では、生活を共にする仲間が怒り、叱るのだ。

 廣中さんといい、ショウといいマヤといい、他人がした悪事や迷惑に対し本気に怒り、叱れる人は、愛情のある優しい人だと思う。問題のある人に対し、令和の今、「怒る、叱る」よりも「面倒なやつだから金輪際関わらない」ほうを選択する人は多いだろうし、荒れる自分の子どもに対してすら「関わりたくない」と他人事のように思っている親も、すでに大勢いるだろう。

 廣中さんは講演で大人たちに「担任の先生も教育委員会も、確かに原因はあるかもしれないけども家庭の中にもう一つ大きな原因があるんじゃないだろうか? 自分の大好きな娘や息子が自殺をしてしまうまで気が付かない親は親じゃない!」 と訴えた。いじめられていることを親にだけは知られたくないと隠す子どもも多い。しかし、廣中さんの発言からは、子どもが隠しているようなことでも、親は気にかけ、関わり、気づいてやれなければいけないんだ、という強い思いを感じた。これは生半可な人間が言っても説得力がまるでないだろうが、1,000人を更生させた廣中さんが言うからこそ響く言葉ではないか。

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