インタビュー

5G、人体への影響は4Gより「少なくなる」? NTTドコモ・専門家が「安心」と説明する理由

2020/01/19 22:00
サイゾーウーマン編集部

 いよいよ今年の春から、次世代移動通信システム「5G」のサービスがスタートする。大手携帯キャリアがCM等でこぞって宣伝を行うだけでなく、「5G」をいち早く体験できるイベントも各地で開催されており、市場は盛り上がる一方だ。

 「4G」よりも通信速度が100倍も速く、大容量のデータ通信が可能になるため、VRや3D映像がより身近になるという「5G」。例えば、自宅でスポーツ観戦をする際にVRデバイスを装着すると、リアルタイムで会場にいるかのような、臨場感のある映像を見ることもできるとか。エンターテインメントの分野だけでなく、遠隔操作で手術を行ったり、車の自動運転が可能になったりと、「4G」では成しえなかったテクノロジーの進化が、現実のものになると期待されている。

 その半面、「5G」の普及により懸念されているのが、電波が人体に与える影響だ。ベルギーの首都ブリュッセルでは、健康被害の危険性を鑑みて、19年4月に「5G」の導入を禁止。これに伴い、ヨーロッパ各国でも「5G」による健康被害の議論が活発に行われているという。また、すでに商用サービスが開始されたアメリカでも、人体への影響を考え、一部地域で「5G」の導入が一時中止されている。

 そんな状況の中、日本で「5G」のサービスが始まることに、不安を抱くネットユーザーの声は少なくない。果たして日本では、「5G」の健康被害について十分な検討がされたのだろうか? NTTドコモに問い合わせたところ、次のような返答があった。

「5Gは、これまで携帯電話システムで使用されてきた周波数より10倍程度高いですが、総務省が定めた『電波防護指針』を満足することが重要だと考えています。 2018年9月に改定された『電波防護指針』および2019年5月に改正された関係法令等を順守することで、引き続き、安心して携帯電話を使用できると考えています」(NTTドコモ担当者)

 要するに、「5G」は政府が定めた「電波防護指針」の範囲内で運用されるため、健康被害については「安心」という判断をしているよう。しかし、そもそも「電波防護指針」とは何か? なぜ、この指針を守ってさえいれば「安心」といえるのか? そんな疑問について、「5G」に詳しい国際技術ジャーナリストの津田建二氏に話を聞いた。

「5Gは人体に悪影響」という根拠は“今のところ”ない

――総務省が定める「電波防護指針」とは、一体なんですか?

津田建二氏(以下、津田) 電波の出力を規制する、安全性の基準です。この基準がないと、強い電波を用いて「人がやけどを負うほどの電磁波」を悪用することができてしまう。そういったことが起きないよう、規制は必要です。この基準は長年の研究や実験に基づいて定められており、世界各国に日本と同様の決まりがあります。

 また、国のセキュリティを守るために、電波は「電波法」で規制されています。これは、テレビやラジオの放送局を第三者、例えば犯罪者やテロリストなどに乗っ取られないようにするための法律でもあります。

――今、世界で「5G」の健康被害が叫ばれていますが、日本でも議論の必要があると思われますか?

津田 まず結論から言うと、「5G」による健康被害はないと思います。一般論ですが、周波数は高くなればなるほど、人間への影響は少なくなります。「4G」は1GHz未満の周波数が使われていますが、「5G」は3.5~4.5GHzと周波数が高くなりますから、人体への影響はむしろ減ると考えられるわけです。

 それに、電波というのはもともと、人体に入らないものです。米国のスタンフォード大学に取材した際、ペースメーカーを人の体に埋め込んだまま、無線で充電する方法を研究されている先生がいました。この先生が困っていたのは、人の体に影響が出ないレベルの電波だと、1~2ミリほどしか電波が体の中に入っていかないということ。何が言いたいかというと、通常だと電波は人の体に入っていかないのです。電波というのは皮膚や皮下脂肪に吸収されてしまうため、例えば「体の中に電波が入って、内臓の機能を脅かす」なんてことは、あり得ないでしょうね。

――とはいえ、実際に「5G」のサービスが始まった諸外国では、健康被害が出たという話もあるようです。

津田 基地局の周辺は電波が強いので、その近くに住んでいたりすれば、健康被害が出るのかもしれません。しかし、現段階では「5Gだから悪い」という因果関係がはっきりしているわけではなく、人体に影響を及ぼすという根拠はありません。「体調不良の原因は、食あたりなのでは?」と言われるレベルで、研究が進んでいないのが現状なのです。

 電波が人体へどんな影響を与えるかというのは、なかなかすぐに結果が出ません。電波を浴び続けて10年、20年、30年と問題がなくても、40年目で突然被害が出るかもしれないし、50年間何も起こらない可能性もある。今は「絶対大丈夫」とも「危険」とも言えないわけです。ブリュッセルで「5G」の導入が禁止されたのは、しっかりした検証ができておらず、不確かな状況なので「ペンディングしましょう」ということ。今のところ日本では、NTTドコモが言うように「電波防護指針」の中で運用してさえいれば、健康被害は心配いらないでしょう。

津田建二(つだ・けんじ)
国内半導体メーカーを経て、日経マグロウヒル株式会社(現・株式会社日経BP)、リード・ビジネス・インフォメーション株式会社、技術ジャーナリストを30数年経験。その間、「Nikkei Electronics Asia」「Microprocessor Report」など英文誌にも執筆。「Semiconductor International日本版」「Design News Japan」などを創刊。海外の視点で日本を見る仕事を主体に活動。著書に『知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな』(日刊工業新聞社)『メガトレンド 半導体 2014-2023』(日経BP社)など。

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最終更新:2020/01/19 22:00
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