知られざる刑務所ライフ82

「京都ダルク」建設反対運動を元“ポン中”が考える――薬物中毒者の大半は凶悪事件を起こしません

2020/01/12 16:00
中野瑠美改め瑠壬(作家)

「自分ごと」として考えて

 迷惑施設をめぐっては、いろんな問題があって根が深いですよね。今回は、ダルクの説明の段取りが悪かったようで、時間がかかるでしょう。こういう問題は、いっぺんには解決できませんが、私の思うところを書かせてください。

 まず、ダルクが地元にできることを住民がイヤがる理由は、「ポン中に何かされるとイヤやから」ですよね。これは、マジほとんどありません。「シャブ山シャブ子」問題の時にも同じことを書きましたが、ポン中が他人を傷つけることは、ほぼないです。なぜなら、自分にしか興味がないから。 

 事件を起こす人は、クスリでアタマがイカれる前に、もともと何か別の病気にかかっているのと違いますかね。でも、ダルクにいる人たちの多くは、病気でもなくて、「ポン中」から脱却したい人たちです。社会に身を置きながら、修行を積んでいるんです。

 反対派の皆さんは、「こんな町中でなく、山奥や離島に行け」とおっしゃっているようですが、それよりも、社会復帰しやすい都会に近いところでがんばるほうが、私はいいと思います。そもそも社会復帰をがんばりたい人たちが受け入れられずに復帰できなかったら、どうなるでしょうか? 社会復帰できない人が増えて、もっとイヤな社会になるのと違いますかね。ここはひとつ、あたたかい目でリハビリを見守っていただきたいです。

 そして、クスリの問題を「他人ごと」でなく「自分ごと」として考えていただきたいです。前にも書いてますが、ダルクは国内になんと90も関連施設があるそうです。それだけクスリをやっている人が多いちゅうことです。これもすごい話やないですか。自分もそうでしたが(笑)。

 ほとんどの方は、「違法薬物なんか自分とは関係ない」と思われているでしょう。田代まさしさんも「オレだけはすぐにやめられると思ってた」とテレビで話されてましたよね。でも、今回また逮捕されました。明日は我が身かもしれません。それに、自分は無関係でも、周囲の大切な家族や恋人、お友だちがクスリに手を出すかもしれませんよ。誰もが、いつダルクにお世話になるかわからないのです。

 クスリに限らず、間違いを起こしてしまった人を受け入れてくれる場所は、ひとつでも多いほうがええと思います。「居場所」の問題については、今後も皆さんと一緒に考えていきたいですね。

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中野瑠美改め瑠壬(作家)

中野瑠美改め瑠壬(作家)

1972年大阪・堺市生まれ。覚せい剤取締法違反で4回逮捕され、合計12年の懲役を経験。出所後は、刑事収容施設への差し入れ代行業や収容者と家族の相談窓口などを行う。現在は堺市内で「Night Space祭」を経営。著書『女子刑務所ライフ』(イースト・プレス)がある。

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最終更新:2020/01/12 16:00
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