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伊藤詩織さん勝訴で山口敬之氏「私は犯罪者ではない」「被害者は笑わない」と強弁

2019/12/19 20:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 ジャーナリストの伊藤詩織氏が、元TBS記者のジャーナリスト・山口敬之氏による性暴力被害を訴えた裁判で、東京地裁は12月18日、山口氏に330万円の損害賠償の支払いを命じる判決を下した。

 山口氏は同日午後に記者会見を開き、「控訴する」と明らかにしたうえで、「私は犯罪者ではない」と繰り返し述べた。

 代理人をつとめる北口雅章弁護士や文芸評論家の小川榮太郎氏とともに記者会見に臨んだ山口氏は、「私は法に触れる行為を一切していない。判決にまったく納得いかない。伊藤さんの主張ばかりが受け入れられ、私の主張は検証されず無視されている」と憤りを見せた。

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「犯罪者扱いされている」
 山口氏いわく、裁判では「伊藤さんの主張を一方的に真実と認定し、私が述べたことはことごとく否定された」。

 しかしこの会見で不自然だったのは、山口氏側が裁判で争点となった合意の有無ではなく、「週刊新潮」(新潮社)や著書『Black Box』(文藝春秋)、海外メディアの報道への「反論」ばかりだった点だ。

 山口氏側は、レイプドラッグの使用や伊藤氏が怪我を負うような殴る蹴る等の暴力はなかったと再三主張していた。

 『Black Box』のディテールや、週刊誌記事への反論をしたうえで山口氏は、「不起訴になっており犯罪者ではないのに、犯罪者扱いされた」と訴え、自身こそ世界中の一方的な報道で名誉を毀損され、バッシングを受けたことによるPTSDに苦しむ被害者であると語った。

「違法でない」と主張
 事件当時の山口氏はTBSワシントン支局長という立場で、伊藤氏はジャーナリズムを学ぶ就活女性という立場だった。

 伊藤氏は山口氏にインターンについて問い合わせ、山口氏は「プロデューサーの職を提供できるかもしれない」として、就労ビザの相談という名目で恵比寿での会食に至ったのだ。

 質疑応答でこの点について、「ワシントン支局長が、就職を希望する相手と性行為に及んだことをどう思うか」と問われると、山口氏は「道義的な部分については……」と言葉を濁し、「犯罪者かどうかで戦っている。反省はたくさんあるが犯罪行為をしていない」と発言。

 「犯罪ではない行動、違法でないことで弁明するつもりはない」とも言い、「不起訴なのに犯罪者扱いされている」ことがもっとも納得のいかない部分のようだ。

 つまり、山口氏は民事裁判を経てもなお、「酩酊した伊藤氏は、性行為に合意していた」と信じ込んでいるのだろうか。

 また山口氏は、「本当に性被害に遭った方」に聞いたところ、「本当に性被害に遭っているのであれば、例えばこういう記者会見で笑わない。あのような表情をすることは絶対ない」との証言を得たのだともいう。

 これは数多の被害者の口をふさぐ、言語道断の発言である。

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性行為直前の証言に大きな矛盾
 このように、会見で記者団が聞きたいことと、山口氏側が訴えたいことは全くズレていた。

 それは東京新聞の記者が、裁判でも指摘された「どちらがどちらのベッドに入ったのか」について質問した際の回答で特に顕著だった。

 『Black Box』には、事件後の山口氏と伊藤氏のメールのやりとりが掲載されている。

 2015年4月18日、山口氏は伊藤氏へのメールで、ホテルの室内やトイレで伊藤氏が嘔吐したことを綴り、

<その後あなたは唐突にトイレに立って、戻ってきて私の寝ていたベッドに入ってきました>

<私もそこそこ寄っていたところへ、あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった>

と説明している。

 しかし民事裁判の法廷で、山口氏はこのメールと異なる供述をしていた。

 法廷では、「別々のベッドに寝ていたが、伊藤氏に呼ばれたので、自分は窓側のベッドから伊藤氏の寝ている入口側のベッドに移動した」と証言。これも判決で山口氏の供述が“不合理な変遷”と評価された理由のひとつだ。

 山口氏はこのメールと供述の違いについて、記者から質問を受けたが、はっきり説明できなかった。

 「僕は時系列でメールを書いているわけではない」「資料を読んでくれ。あなたが酔ってしまったから結果的に私のベッドで寝ることになったと書いてある。矛盾しているとは思っていない」「裁判資料を読んだうえでもう一度取材に来て下さい」と、強引にまとめたのだ。

「新潮」が出したドアマンの証言
 12月19日発売の「週刊新潮」は、この件についてシェラトン都ホテルのドアマンの新たな証言を掲載した。

 同誌によれば、事件当夜、タクシーから降りた山口氏と伊藤氏に対応したドアマンは、<客観的に見て、これは女性が不本意に連れ込まれていると確信>していたのだという。

 なぜなら、伊藤氏は<足元がフラフラで、自分では歩けず、しっかりした意識のない、へべれけの、完全に酩酊されている状態>だったためだ。

 そしてタクシーの車内に嘔吐してしまったことから、伊藤氏は「そうじするの、綺麗にするの」と繰り返し<幼児の片言みたいに>つぶやいていたという。

 このドアマンの証言は今回の裁判には考慮されていないそうだ。

 山口氏は控訴するというが、しかし山口氏側の証言や主張を裏付けるものは今後、新たに出てくるのだろうか。

 会見で、裁判の争点となっていない周縁の話題に終始し、伊藤氏を「嘘つき」呼ばわりした山口氏陣営に勝ち目があるようには見えない。

 ちなみに、会見のネット中継にはリアルタイムでコメントが書き込める仕様だったが、山口氏を支持するコメントの多くが、伊藤氏を「まるで慰安婦」「ハニトラ」と罵るものだった。

事件の流れ
 この事件は2015年4月3日に起こった。当時TBSのワシントン支局長だった山口氏と、就職先を探していた伊藤氏が、東京・恵比寿で会食。酩酊した伊藤氏とタクシーに乗り、山口氏が宿泊していたシェラトン都ホテルで性行為があった。

 伊藤氏は会食の途中から記憶を失い、目覚めたら性行為をされていたと主張。4月30日に警視庁高輪署が伊藤氏からの刑事告訴状を受理している。

 しかし「週刊新潮」の報道、および伊藤氏の著書『Black Box』等によれば、準強姦(当時)容疑で逮捕状が出たものの、当時の警視庁刑事部長である中村格氏の決済により一転して逮捕は中止になった。

 その後、山口氏は書類送検されたが東京地検は不起訴と判断。伊藤氏は2017年5月に検察審査会に審議申し立てをしたが、「不起訴相当」とされた。

 そして2017年9月に伊藤氏は山口氏に対して1100万円の損害賠償を求める民事訴訟を起こし、山口氏側も名誉を毀損され社会的信用を失ったとして伊藤氏へ慰謝料1億3000万円と謝罪広告の掲載を求め反訴した。

 2019年12月18日、東京地裁は、伊藤氏の供述には整合性がある一方で、山口氏の供述は「重要な部分において不合理な変遷が見られ、信用性には重大な疑念がある」とし、山口氏が合意のないまま性行為に及んだと認定。慰謝料300万円と弁護士費用30万円を支払うよう命じた。

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最終更新:2019/12/19 20:00
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