オンナ万引きGメン日誌

「人間のクズ」と店長戦慄! 万引きGメンに捕まった少女、その両親の恐るべき“復讐”とは

2019/12/14 16:00
澄江(保安員)

「その手を離せ」万引き少女の両親がやって来て……

(今日は、ここまでかな)

 重みの増したバッグのチャックを閉めて、足早に歩き始めた彼女は、レジを通ることなく店の出口を通過しました。バッグのひもを掴んで彼女を呼び止めると、店内で見かけたカップルが、ママチャリに乗って駆けつけます。

「おい。ウチの娘に、何をしているんだ。その手を離せ!」

 どことなくパンチ佐藤さんに似ている男の、どこか偉そうに聞こえる独特のしゃべり方が耳に障ります。

「あら、こちらのご両親でしたか。お店の者ですけど、このバッグの中に、お支払いただかないといけないものがたくさん入ってるので、事務所まで一緒に来ていただけますか?」

 少し嫌味っぽく言うと、どこか不良っぽい、朝青龍に似た顔をした母親が、彼女を睨みつけて言いました。

「ええっつ!? あんた、本当なの?」

 黙って頷く彼女でしたが、目撃した状況と盗んだ商品から察するに、彼らが指示を出して盗ませたに違いありません。全ての罪を子どもになすりつける悪質な姿勢は、親どころか人として許せないレベルで、こんな人間を親に持つ彼女が可哀想に思えました。

「よく言って聞かせますし、買い取らせていただきますので、今回だけは勘弁してもらえませんか」

 言い慣れたセリフを言うように、まるで気持ちのこもっていない口調で許しを乞う母親を無視した私は、「大丈夫だから」と宥めながら、嫌がる一家を事務所まで連れて行きます。事務所の扉を開くと、彼らの顔を見た店長が慌てた様子で駆け寄ってきました。

「いつも、ご迷惑をおかけしております。また、迷惑駐車でしょうか?」
「いや、その……」
「なにか支障がございましたら、すぐに警備員を……」
「いや、今日は、大丈夫なんだけど……」

 どうやら店長の顔見知りらしく、なにかを勘違いされているようなので、私の口から状況を説明します。すると、店長は途端に態度を急変させ、思いのほか乱暴な口調で言いました。

「いままで散々クレームをつけてきたうえに、商品まで盗んでいくなんて、あんまりじゃないのよ」
「まだ小学校を卒業したばかりの子どもがやったことだし、全部買い取るから、それでお願いしますよ。いつも迷惑してるのは、こっちの方なんだし、お互い様でしょ?」
「はあ? いくらお隣で、ご迷惑をかけているとはいえ、それとこれとは話が別よ。子どもだけの話かどうか、警察を呼んで調べてもらいますね」
「ああ、呼べよ。そこまでするなら、おれも考えるよ」

 固定電話の受話器を上げ、その場で通報を始めた店長の横で、母親が言いました。

「お隣同士、お互い様なんだから、今日のところは勘弁してもらえませんかねえ。ご近所だから、こんなことで揉めても、ろくなことないわよ」
「申し訳ないけど、ご近所だからこそ許せません。このお店には、二度と立ち入らないでくださいね」

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