[サイジョの本棚]

『しらふで生きる』レビュー:酒、趣味、人間関係に無意識で依存している人に響く「解脱」までの日々

2019/12/24 21:00
保田夏子

「破滅的な生き方=アーティスト」という印象論

 ふざけているような、真剣なような町田節に引っ張られるうちに、3カ月、半年、1年、3年と着々と禁酒は継続され、徐々に「飲まない状態が正気」になっていく。そして、「痩せた」「睡眠の質が向上した」「浪費しなくなった」「脳髄のええ感じにより仕事が捗るようになった」「精神的に余裕が生まれた」など、序盤の葛藤がうそのように、立て続けに禁酒のメリットが挙げられるようになる。酒をやめても幸せになるわけではないし、賢くなれるわけでもないとつづられているが、終盤の心象風景は憑き物が落ちたように軽やかで、もうアルコールに溺れることに魅力を感じているようには見えない。

 本書の冒頭では、自身の起こした酒席でのトラブルを幾つも挙げつつ「『ああ、あの人は酒飲みだから』ということで、風景として受け入れられ」てきたと振り返っている。優れた作家であり、作家デビュー前から熱狂的な支持を受けるミュージシャンでもあった彼の周囲には、おそらく「酒に溺れるような破滅的な生き方こそ、一流のアーティスト」と称賛する人もいただろう。しかし、禁酒後のほうが「仕事が目に見えてよくなる」と断言する町田氏の言葉は、一部の人が持つような、ある種凝り固まったアーティスト像を気持ちよく吹き飛ばしてくれる。

 「酒を飲んでも飲まなくても、人生はもともと寂しいもの」「渇いているからといって(銭で購える)幸福をがぶ飲みすると、その後がもっと苦しくなる」という持論は、酒の話ではあるが、何かに依存している人すべてに通じる話でもある。本作は、「酒徒を論難したり排撃したりするのはやめてほしい」とある通り、飲酒を否定するものではない。おそらく、適量で収められるなら、禁酒する必要もないのだ。ただ、町田氏がそうであったように、「適量」と思って気づかずに依存状態に陥っている場合もある。酒に限らず、趣味やSNS、ショッピング、特定の人間関係――本来やるべきことをやめてまでやりすぎてしまったり、不足すると過剰に不安になったりするものに覚えがあるとしたら、実は依存状態に足を踏み入れてしまっているのかもしれない。そんな、自身の無自覚な一面を突き付けられ、ぞっとしてしまう一冊でもある。
(保田夏子)

最終更新:2019/12/24 21:00
しらふで生きる
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