オンナ万引きGメン日誌

さっき捕まえた「ヨーダ似の老婆」舞い戻ってきた!? 万引きGメンの「世にも奇妙な物語」

2019/11/30 16:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

 こんにちは、保安員の澄江です。

 レギュラーで入っているスーパーで勤務していたときのことです。小学校低学年くらいに見える可愛らしい双子の姉妹が店に入ってきました。どうやら一卵性双生児のようで、服や靴はもちろん、持ち物に髪形までもがお揃いで、親でなければ見分けられないほどよく似ておられます。あまりに可愛らしく「初めてのおつかい」を見る気分で幼い2人の動向を気にしながら巡回していると、同じタイミングで同じ商品を手に取り、その瞬間に同じ言葉を発する場面を目撃。以心伝心とはこのことだと、とても不思議で興味深かったです。

 まるで孫を見送る祖母のような気持ちで、お菓子を片手に仲良く店を出て行く姉妹の背中を見送りつつ、ふと、先日起きた薄気味悪い事件を思い出しました。

 それはついこの前のことです。新規の契約先となった総合スーパーにて、初日の勤務を任されました。契約初日の勤務を任されるのは、会社から信頼されている証。そう言ってしまえば聞こえはいいですが、結果を出さなければならないプレッシャーが強く、慣れた現場における勤務よりも疲れます。

「ウチは、常習さんも含めてたくさんいるけど、大丈夫? この仕事は、長いの?」
「はい、40年ちょっとくらいになります。いればわかると思いますので、充分に注意して巡回しますね」
「ほー。今日は、忙しくなりそうだなあ」

ヨーダ似の老婆が見せた熟練の早業

 目を丸くして感心しつつも、まるで期待してなさそうなゴリラ顔の店長さんに挨拶を済ませて、妙なプレッシャーを感じながら現場に入ると、邪悪な目をした老婆が店に入ってくるのが見えました。

(あのおばあさん、やりにきたのかな)

 『スター・ウォーズ』に出てくるヨーダに似た目をした老婆から、溢れ出るような犯意を感じた私は、その行動を確認するべく彼女の行動を確認します。するとまもなく、ヨーダは厚揚げ、ちくわ、ウインナーなどの商品を手にし、店の死角通路で花柄の刺繍が入った黒のトートバッグに商品を全て隠すと、なにひとつ買うことなく外に出ていってしまいました。その熟練された早業は、この仕事に長年従事してきた私からしても目を見張るほどの技術で、相当な常習者だと感じられます。

「お店の者です。このバッグの中に入れたモノ、お支払いただけますか?」
「あら、いやだ。うっかりしてた! いま払うから……」
「申し訳ないけど、事務所でお支払いただけますか?」
「なんで? 嫌だよお……」

 声をかけると同時に、踵を返して店内に戻ろうとしたので、腰元を咄嗟に掴んで制止します。両足の爪先を立てて一歩も歩こうとしないヨーダの体を、後方から押すようにして事務所に連れていき、事務作業中の店長さんに引き渡しました。

「万引きです」
「え? もう? スゲエなあ」

 指定の場所にヨーダを座らせ、トートバッグに隠したモノをデスクに出させると、計5点、合計1,200円ほどの商品が出てきました。話を聞けば、ヨーダはこの店の近くに住んでいるといい、年齢は78歳で、身分を証明するモノは持っておらず、所持金は300円ほどしかないと言います。買取不能であることが判明した途端に、顔色を変えた店長は、少し乱暴な口調でヨーダを責め始めました。

「一度あんたのバッグに入れられたものを、お店で売るわけにはいかないから買い取ってもらいたいんだけど、家の人とか、誰か立て替えてくれる人は呼べるの?」
「妹と一緒に住んでいるけど、いまケンカしてるから頼りたくない。全部返すから、それで勘弁しておくれ」
「なんで盗っちゃうんだよ? 悪いことだって、わかってんだろ?」
「年金だけじゃあ、生活が苦しくて、食べていけないのよ。あたしじゃなくて、世の中が悪いんだよお」

 まるで反省の見えない態度で店長さんに許しを乞うたヨーダは、まもなく警察に引き渡されると、なにかしらの前科があったらしく簡易送致されることになりました。

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確かに少しも可愛くない……
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