『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』祖父母の子育て支援という高い壁「娘がシングルマザーになりまして… ~29歳の出張料理人 彩乃~」

2019/11/25 18:06
石徹白未亜

 根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。11月24日の放送は「娘がシングルマザーになりまして… ~29歳の出張料理人 彩乃~」。シングルマザーの出張料理人と、娘を支える祖父の日々の模様だ。

『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 自宅や職場などに出向き料理を振る舞う出張料理人の仕事を東京でしていた新羅彩乃29歳。子どもができるも、相手の男性から堕ろしてほしいと言われシングルマザーを選ぶ。しかし、仕事の時間が読みにくい出張料理人とシングルマザーの両立は厳しく、借金をして事業拠点となる自分のキッチンを構えることに。キッチンが完成してからも、気の強い彩乃とスタッフとの関係はうまくいかない。

 娘の現状を見て石川県から父・孝志(62歳)が会社を辞め上京。当初は孫の育児だけを担当していたが、プログラマーだった経験を生かし会計ソフトを作ったり、彩乃の作った弁当を売るリアカーを設計、製造するなど活躍を見せる。番組の最後に父についてスタッフから尋ねられた彩乃は「支えしかないですね。感謝忘れず頑張ります」と涙する。

今回の主役は娘でなく父・孝志62歳

 今回のタイトルは『娘がシングルマザーになりまして』の通り、真の主役は娘・彩乃でなく父・孝志だったように思えた。孝志の成長物語といってもいいくらい孝志が輝いていた。

 孝志は地元石川県で30年プログラミングの仕事に就いており、出張料理人という、道なき道を突き歩む娘に自分が何かできる立場ではないと、上京後も仕事ぶりを遠巻きに見守るだけだった。孝志は取材で「自分の思いとやりたい事と実際にできる事のバランスがよくわかっていなかった」と当時の自分を振り返るが、これが「わかった」途端、飛躍する。

 孝志はその後、プログラマーだった経験を生かし会計ソフトを作り、趣味の木工細工の腕を生かして彩乃の作った弁当を売るリアカーを一人で手掛ける。完成したリアカーは屋根や広告までついていて「素人の素朴な手作りリアカー」とは一線を画していた。

 リアカーを作る際、孝志は慣れた様子で木にノミで凹みを入れながら、「人件費を安く抑えるためには親父を安く使うしかないよね」と笑っていた。楽しそうに働く人がいる職場はうまく回る。彩乃にとって孝志がサポートしてくれること自体ありがたかっただろうが、「いやいややってる」感がなく、楽しそうに働く父の姿自体は大きな支えになっただろう。

「自分の思いとやりたい事と実際にできる事のバランス」が取れていると、働いていて楽しいし、やりがいもある。一方、ここがちぐはぐであったり、ちぐはぐなことに対して自分は何も言える立場でないときは、無力さを感じてきつい。

 そして「自分の思いとやりたい事と実際にできる事のバランス」は、会社組織で働くよりも、彩乃のような個人事業主の方が実現しやすいように思える。会社は組織である以上、効率化のため大なり小なり分業化がある程度進んでいるため、やりたいことやできることは自分の管轄外、ということが起きてしまうこともある。

 一方個人事業主はすべて自分でこなさないといけない。確定申告など、本業と関係のないこともすべて自前で行う必要がある。私自身一個人事業主として、この「なんでも自分でやる」は、うんざりすることもあるが、なんだかんだで結構好きだ。本業以外もなんでも全部自分でやることを通じて、自分の可能性や進化に気づき自信になったことは、個人事業主になって得られた大きなことだったと思っている。60歳を過ぎ簿記検定に挑む孝志は輝いていて、そこに「老後」感は皆無で、かっこよかった。

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