インタビュー

『グランメゾン東京』、“食物アレルギー事件”はなぜ起きた? 意外と知らない基礎知識を医師が解説

2019/11/22 21:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman
『グランメゾン東京』(TBS系)公式サイトより

 木村拓哉が主演を務めるドラマ『グランメゾン東京』(TBS系)。初回平均視聴率12.4%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)を記録してから、第5話まで2ケタ台をキープしている。

 本作は、かつてフランス・パリに自分の店を持ち、ミシュランガイド二つ星を獲得したこともあるカリスマシェフ・尾花夏樹(木村)が主人公。3年前、世界の要人を招いた席にシェフとして参加した尾花だったが、料理を食した閣僚が“ナッツアレルギー”を起こしたことで、店も名誉も仲間もすべて失ってしまう。再起をかけ、尾花は東京で世界最高峰の三つ星レストラン「グランメゾン東京」を作ろうと奮闘する……というストーリーだ。

 この物語を動かすひとつの要素として、“食物アレルギー”がある。11月17日放送の第5話では、「グランメゾン東京」のオープン直前、尾花が3年前に起こした“ナッツアレルギー事件”が、週刊誌によって暴露されてしまう。これによりネットは炎上、予約もすべてキャンセルという事態に。レストランのスタッフから責められる尾花だったが、この事件を起こした“犯人”は別人だったことが発覚。尾花は信用を取り戻し、「グランメゾン東京」にも客が訪れるようになった。しかし、この展開に視聴者からはさまざまな声が上がっている。

 そもそも、高級レストランで食物アレルギーが問題になること自体、「想像できない」という人は多い。ネット上には、「高級レストランは管理が行き届いてると思っていたけど、こういうケースって本当にあるの?」「アレルギーの原因になるものを、普通に厨房へ置いておくとは思えない」といった疑問が投稿されている。また、「腕利きのシェフが集まってもこんな事件が起こるなんて怖い」「ナッツアレルギーって、ひどいと死に至るって聞いて恐ろしくなった……」など、食物アレルギーへの恐怖を感じる人も。

 そこで今回、日本医師会認定産業医/内科医・星野優先生に、「グランメゾン東京」で起こった“ナッツアレルギー事件”をめぐる基礎知識について聞いた。

ナッツを食べていないのに“ナッツアレルギー”が起こる!?

 まず星野先生は、高級レストランで客に食物アレルギーが起こるという展開自体について、「十分ありえると思います」という。

「高級レストランでは大抵、予約時やオーダー時にアレルギーの有無などを客に聞くと思いますが、病院での問診ほど詳細について確認することはまれです。つまり、レストランでは客の“自己申告”を頼りにするしかないので、そもそも客自身がアレルギーを把握していなければ、防ぎようがありません」

 「グランメゾン東京」では、客本人もシェフたちも、ナッツアレルギーを把握し警戒していた。しかし、“ナッツオイル”が原因で事件が発生。ナッツそのものは食べておらず、オイルを微量に摂取しただけとみられるが、星野先生は「重度の食物アレルギーであれば、ほんの一口や、 調味料の混入程度でも、急激に反応が出ることがあります」と、その恐ろしさを述べた。

「症状が軽い方であれば『少し湿疹が出る』程度で済むこともありますが、いわゆる“アナフィラキシーショック”という重篤な症状を起こした場合は、喉や気管のむくみに伴い、ぜんそくのような症状から呼吸不全で窒息、また、血圧低下や循環不全に伴いショック状態になり、死に至る危険性もあります」

 「高級レストランなら安心」との認識もあるが、“外食”自体に食物アレルギーの危険が潜んでいると、星野先生は警鐘を鳴らす。

「高級レストランであれば、一般的な食堂などよりは管理が行き届いているでしょう。しかし、きちんとアレルギー食材を除いていたとしても、 調理器具などすべてを洗浄しきれないと、アレルギーが起こることがあります。とはいえ、調理器具をアレルギー別に分けるといった対応は、現実的に難しい。家族のアレルギーを把握し、家庭内で対策することはできても、不特定多数の人が訪れるレストランで同じことをするのは困難でしょう」

 『グランメゾン東京』により、食物アレルギーへの関心が高まっている今、まずは正しい知識を得ることから始めたいものだ。

最終更新:2019/11/22 21:00
ここからはじめる食物アレルギー
まずは自分が何アレルギーか知らないとね!
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