オンナ万引きGメン日誌

万引きGメンの息子が、スーパーで「万引き」! 「親子で何やってんだよ」店長さんの痛烈な皮肉

2019/11/17 16:00
澄江

店長さんから告げられた「契約解除」

 彼女とは、研修会で顔を合わせる程度の関係しかありませんが、会社の同僚であることに違いはありません。あまりの気まずさに言葉を失った私は、事務的に処理を進めることで、この場からの脱出を目指すことにしました。それを察したらしいTさんも、財布を弄って釣銭のないように商品代金を用意すると、出入禁止の誓約書に署名しなさいと自分の息子に迫っています。

「もう、この店に来たらダメなんだからね。わかった?」
「うん……」
「捕まってよかったんだよ。感謝しないと」
「はい……」

 まるで自分が捕まえてきた少年万引き犯に説諭しているように見えますが、この2人の立場は加害者側。こちらが恥ずかしくなるような違和感を覚えつつ2人を見守っていると、泣きながら誓約書に署名する親子を前に、何か汚いものをみる時のような顔をした店長さんが、吐き捨てるように言いました。

「まったく、親子で何やってんだよ。ほんと、どうしようもねえな。今月一杯で契約解除するって、あなたの会社にも伝えといて」

 今月の契約日数は、あと1日しか残っていません。全ての処理を終えて、気の利いた言葉をかけられないままTさん親子を見送った私は、一連のことを担当部長に報告しました。すぐに謝罪に行かれた部長さんでしたが、店長さんは聞く耳を持たず、状況は変えられなかったそうです。

 そうして迎えた契約最終日。Tさんに代わって現場に入り、入店の挨拶をするべく事務所に伺うと、出迎えてくれた店長さんが気まずそうな顔で言いました。

「せっかく捕まえてもらったのに、契約を切っちゃって申し訳ない。自分のところで使っている保安員の息子が、母親の現場で万引きするなんて気持ち悪くて、どうしても許せなくてさ」
「いえいえ、仕方のないことですよ。あんなこともあるんですねえ」

 何気なく壁に目をやると、少年の写真が追加される形で「出入禁止の方々ポスター」が新調されていました。どこか嫌な気持ちになったのは、言うまでもありません。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

最終更新:2019/11/17 16:00
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