オンナ万引きGメン日誌

万引きGメンの息子が、スーパーで「万引き」! 「親子で何やってんだよ」店長さんの痛烈な皮肉

2019/11/17 16:00
澄江

 こんにちは、保安員の澄江です。

 先日、大手警備会社であるセコムの従業員が、警報機の誤発報を起こした契約先に合鍵を使って入室した際、カルティエの高級時計など計125万円相当の貴金属を盗んで逮捕されるという事件がありました。まもなく盗品を転売しているところをみれば、計画的な犯行だったのでしょう。家宅捜索の結果、多くの高級時計が発見されたというので、常習性も高そうです。人の財産や生命を守る立場にある警備員が、勤務中に、ましてや制服姿で犯行に及ぶなど言語道断の行為で、同業者の端くれとして大きな憤りを覚えます。被害者の立場からすれば、セコムをしていたおかげで窃盗被害に遭ったことになり、恐らくは人間不信に陥ってしまうでしょうね。警察OBの天下り先として名を馳せる同社が、どのように信頼回復を図っていくのか、今後の推移に注目したいところです。

 少し前には、埼玉県三郷市内にある警備会社の社員が、契約先から預かった3億6000万円もの現金を盗み出して、指名手配された後に逮捕されるという事件もありました。さらに言えば、女性万引きGメンがドラッグストアで万引きをして、警戒中の同業者に逮捕されるという事件も記憶に刻まれています。彼らの愚行は、業界全体の信用を大きく失墜させるもので、その罪は重いと言わざるを得ません。今回は、関係者による犯罪行為のおかげで、ひどく気まずい思いをした事案について、お話していきたいと思います。

 当日の現場は、東京の下町に位置する生鮮食品スーパーE。値段の安さと豊富な品揃えが評判で、地域一番の人気店として知られる昔ながらの名店です。

 この日の勤務は、開店時刻である午前9時から午後5時まで。事務所に出向いて、30代前半と思しき関ジャニ∞・村上信五さん似の店長さんに入店の挨拶を済ませると、壁に貼られている「出入禁止の方々」というタイトルがつけられた1枚のポスターを見せられました。

「この人たちが来たら、必ず知らせてください」

 そのポスターには、20人ほどの顔写真が、不規則な形で並べられていました。少しでも顔を覚えるべく凝視すれば、どこか不潔な感じのする人ばかりで、皆一様に不貞腐れた顔をしています。捕捉された万引き犯だけでなく、酒に酔って暴れた人や意味なく商品を損壊して回る人なども含まれているようで、写真の脇に「暴力を振るってきます」「焼魚を指で押します」などという変わったキャプションがつけられている人もいました。

「もし来たら、どうするのですか?」
「出て行ってもらいますよ。出禁なんだから、当たり前じゃないですか」

 万引きをして捕捉された被疑者に、今後二度と店に出入りしない旨の誓約書を書かせる店は多く、それを約束させることで被害届を出さないで済ませることは珍しくありません。しかし無用のトラブルを避けるためなのか、たとえ約束を破って再来店されたとしても、厳しく適用する店は少なく、それとなく見守ってやり過ごすのが通常の対応と言えるでしょう。しかし、この店は違うようです。

「ずいぶんと、厳しくされているんですね」
「この辺は、酔っ払いも多いし、あまり治安のいい街じゃないから仕方ないよね。約束は、きちんと守ってもらわないと」

 ここに万引き犯を捕まえてきたら、どんなことになるのでしょうか。稀にみるほど厳しい対応を見せそうな気配に、気の抜けない雰囲気を感じた私は、いつにも増して気合を入れて巡回を始めました。

新品本/万引き老人 「貧困」と「孤独」が支配する絶望老後 伊東ゆう/著
澄江さんの「こちらが恥ずかしくなるような違和感」に深くうなずく
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