【連載】オンナ万引きGメン日誌

「このくそババア!」鬼嫁にブチギレられた“万引き老婆”……Gメンとの再会で恨み節炸裂!!

2019/10/26 16:00
澄江

「こんなに人を不幸にして」再会した老婆の言葉に怒り

「あなた、あの時の……」
「あたしは、40万円の罰金刑になって、労役に行かされたんだ。罰金を払えるような金はないし、家族にも立て替えてもらえなかったから、3カ月近くも拘置所で働かされたの。あんたのおかげで、もう地獄だった」
「そんなこと言われても困りますね。悪いことをしたのはあなただし、罰を受けるのも仕方ないじゃないですか」
「ふん、なによ。たかが警備員のくせして、偉そうに。あたしは家を追い出されて、6畳一間のアパートに独りで暮らしているんだ。あれから孫にも会えていないし、あんたへの恨みは、一生忘れないから」

 この人に、何を言っても仕方ない。言葉を返すこともなく、待合室で睨み合っていると、私の名前がタイミングよくアナウンスされました。診察室に向かうべく、老婆の視線を無視する形で立ち上がったところ、憎々しげな顔の老婆が私の背中に向けて呟きます。

「こんなに人を不幸にしておきながら平気な顔して、あんたみたいな人が一番悪いわ」

 診察室に入ると、怒りからなのか顔が相当に紅潮していたようで、担当してくださる舟木一夫似の医師に驚かれました。ここだけの話だと、堪えきれずに事情を話せば、深呼吸をするよう進言され、少し落ち着いたところで医師が言います。

「私も、ここだけの話をしますね。あのおばあちゃんね、かなり認知症が進行しているので、近いうちに忘れちゃうと思います。だから、心配しないで。大丈夫ですよ」

 素敵な笑顔で慰められて、老婆への怒りが鎮まった私でしたが、今度は目の前にいる医師に向けて心拍数を上昇させることになりました。素敵な男性の優しさに触れると、年齢に関係なく、ときめいてしまうものなのです。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)

最終更新:2019/10/26 16:00
万引き家族
あたちも舟木一夫似のお医者様にときめいたわ!
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