[再掲]天理教のツマ、「宗教合宿」2泊3日潜入記

天理教、知られざる「宗教合宿」と信者22万人が集う「おぢばがえり」に潜入してみた!

2019/10/21 18:30
有屋町はる

天理教、知られざる「後継者合宿」と信者22万人が集う「おぢばがえり」に潜入してみた!の画像1

 いろんな宗教が世の中にはありますが、その“内側”を知る機会は滅多にないもの。今回、義実家が「天理教」の教会だったというライター・有屋町はるが体験した、世にも珍しい(?)潜入体験をお届け。「後継者合宿」「おぢばがえり」に「ひのきしん」「おやさま」――耳慣れない専門用語が飛び交う現場で、目にしたものとは!?

夫の実家は「天理教」!? 奈良県天理市の「後継者合宿」に子連れ潜入

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ウキウキ気分でインスタにアップ

 夫の実家が天理教の教会だと知ったのは、結婚直前でした。当時、天理教についての認識といえば、「黒い法被を着て、路上で太鼓やシンバルのような楽器を叩きながら、歌い練り歩く宗教」であり、なんとなく、カルトの部類とは違うんだろうなあ、という程度。

 あの日、初めて夫の実家に行くと、それはそれは情緒溢れる立派な教会、というか神社? いや、道場? が、ドーンと待ち構えていました。古い木造の家に瓦造りの屋根。立派な神棚と、ずらりと並ぶ楽器。何十畳もの畳が敷かれた大広間。それを目の当たりにした感想は、「かっこいい!」のひとこと。

 で、教会の機能はというと、警察でいうところの「派出所」にあたるようでした。奈良県は天理市にあり、教祖的な人がいる「本部(神殿)」という名の「警察庁」があり、その下に「群馬県警」的な「大教会」というのが各地にあったり、いろいろ経たあとのもっとも末端が、夫の実家の「教会」だそうなのです。

 実家の人たちは、そこで毎朝6時と毎晩18時に、「おつとめ」といわれる、楽器演奏&歌と、踊り&歌をやります。覚える気などさらさらないわたしは、朝は早くて起きられないから参加もしないし、夜は後ろの方で正座をして「楽器演奏はやってみたいなあ。やるなら大太鼓がイケてていいなあ」などのんきに考えているくらいでした。

 さて、結婚5年目。いつものように帰省すると、義母が夫に言います。

「ねえ、あの話、考えてくれた? 行く?」

 夫は、「いやあ、まあ」などとごにょごにょ言います。話が見えないので聞くと、どうやら天理教の「後継者講習会」なる2泊3日の合宿に、わたしたち夫婦で参加してほしいとのことでした。わたしに話すのが面倒な夫は、返事をうやむやにしていたようでした。

黒い法被に「天理教」の文字――まるで異世界!?

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 いよいよ後継者講習会を翌々日に控えた晩、夫とふたりで、持ち物の確認をすることになりました。簡単な持ち物は、義母から転送された「後継者講習会の持ち物リスト」で把握したし、2人の子どもたちは、わたしたちの講習中に天理教施設内の保育園に預けられることもわかりました。それに、「洗濯機はあるけど、干す場所があるかはわからないから、タオル類はたくさん持っていけ!」ということも(大事)。

 夫に、「どうせ3日間ずっと法被(はっぴ)を着ていることになるから、服はほんとうにどうでもいいと思うよ」と、おしゃれ欲に釘を刺されつつ、いざ出発日です。講習会前日の朝、車で8時間かけ、天理市に前乗りしました。

 山を降りると天理市に入るのですが、ここは、本当に、日本なのでしょうか。

 ところどころ印象的な赤色が施された瓦屋根の黒とグレーを基調としたどでかい集合住宅が、同じようにいくつも立ち並び、路上を歩く人々はみな、背中に「天理教」と書かれた黒い法被を着ています。あほでも、「異世界に紛れ込んだ」と思わせる雰囲気を放つ街並みです。創価学会陣取る東京都・信濃町一帯や、顕正会が幅を利かせる埼玉県・大宮公園駅界隈など目じゃありません(幸福の科学が町ぐるみになったら勝てるかもしれませんが)。

 ディズニーランドがある舞浜に近い……? いや、あのようなハリボテ感はありません。もっとも近いのは、「沖縄」かもしれません。日本なのに日本じゃない、古くから脈々と続く独自の伝統文化が、がっちりと、ぎっしりと根付いている印象を受けました。

みんなゴリゴリの天理教信者じゃん!!!

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 これが、天理教本部。からっぽの信仰心をも煽る、広大で重厚な趣き。「でかっ……」と、思わず見惚れていると、AさんBさんは神殿に向かいナチュラルに一礼をしていました。天理教独自の、4回手拍子をしたあとに。

 本部に近づくにつれ、黒い集団がどこからともなく湧いて出てきます。巨人戦開始前の東京ドームのような人口密度といいますか、何千人規模ではないでしょうか? みな神殿に吸い込まれ、中に入るとさらにびっくり。黒い人間が、広大な神殿内に、ずら―――――っと、規則正しく正座をして並んでいるではありませんか。

 壮観。圧巻。

 わたしもAさんBさんにならい、正座をします。

 ふと空気が変わり、全員参加者全員が神殿内に入ったのでしょうか。

 ♪えぇ〜あしきをはろおてた〜すけた〜ま〜え〜てんりのみ〜こ〜と〜
(ちん、どん、ちん、どん/太鼓や鈴の音)

天理教って、いいところかも……!?

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 あらかじめ、世代別にひとクラス30人ほどに分けられており、わたしも事前に知らされていた該当教室に向かうと、教室の手前と奥に、長椅子が2本。適当に、空いていた奥の椅子に座ると、ふと気づいたらその椅子は全員男性。女性はみな、手前の椅子にずらり。やばい、間違った……。

 ところでこれって、”宗教あるある”じゃないですか? 「婦人部」や「青年部」など、やたら男女で分けがち。そんなテンションに慣れていないわたしは、まるで仲間外れのごとく、講義開始を待つことに。

 しばらくすると、講師が入室。俳優の和田正人サン似の、40代半ばの爽やかハンサムです。

「まずはみなさん、居住地順に並んでください」

 挨拶もそこそこに、和田サンが言います。こ、これは……よく耳にする、自己啓発セミナー特有の……「初対面を強引にコミュニケーションさせる手法」ではないか!

“天理教ド素人”の私が、たった2日で……

 2日目の朝。天理市に来てからというもの人間の順応性に感心するばかりですが、天理偏差値5以下のわたしでも、朝の「おつとめ」で踊りをできるようになってきました。人間、閉鎖された空間に押し込められると、なんでもできるんですね。

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天理教の教会(筆者撮影)

 ふと同室のAさん、Bさんを見やると、なにやら様子がおかしい。やたら乙女チックなのです。

「いいなー、子連れじゃない人たちは」
「早朝に“おやさま”を見に行けたんでしょう?」
「もー! ずっるーい! わたしも見たかった〜!」
「ねー! わかるぅ〜!」

 2人はサッカー部の先輩の県大会決勝戦を見に行けなかったようなテンションで話していますが、まったくついてゆけません。

 2人に聞いてみると、天理教の教祖である中山みきさん(1798~1887)こと「おやさま」(天理教特有の教祖の意味)の、お披露目の儀式(?)が、早朝5時頃、神殿であったそうなのです。身軽ではない子連れたちは、そこに行けずじまいで悔やんでいる、といったところでした。

天理教の感動エピソードで、涙がドボドボ

 この日のプログラムで講義をするのは和田サンではなく、大教会の教会長兼教団幹部の男性、要は偉い人です。岸部一徳からクセを抜いたような、ダンディーなおじさまです。

 あらかじめ配られていたテキストを基に講義を行うのですが、このテキストが素人にはさっっっぱりわからない! 「おやさま」や「真柱様」といった天理用語はまだまだたくさんあるのですが、テキストにはそうした言葉が羅列してあって、初心者には解読できない仕様になっています。

「ふしから芽が出る」

 とか、意味がわからないでしょう? わたしもいまだにわかりません。

 さて、岸辺一徳の話はテキストとは違い、非常にわかりやすいものでした。

 ある信者家族の実話感動エピソードを、情感たっぷりに話すものですから、隣の介護士女性は美しい涙を目にため……るどころか、頬に伝わせているではありませんか。

 なんてピュアな空間なんだろうか。

 彼女の涙を見てわたしも真剣に聞いてみると、こんな話でした。

 ある少女が、母の日にサプライズで近所の花畑からきれいな花を取ってこようとした。が、突然の大雨。少女が遭難したと一家は大騒ぎ。ずぶ濡れで帰ってきた少女に、母親は「なにをやっていたの!」とガチギレ。少女、ギャン泣き。すぐに風呂場へ行かせると、少女の手に美しき一輪の花が握られていることに気づきました。母親は、ガチギレしてしまったことに胸を痛めます。

 少女がすんすんと泣きながら風呂場から上がると、食卓のテーブルには、一輪の花が飾られています。

「ありがとう」

 母親は少女を抱きしめましたとさ――。

 天理教の教えのひとつに、「家族を大切にする」というものがあるそうで、岸部一徳も、強く、そして優しく、家族の尊さを訴えていました。

天理教、潜入3日目ーー理想と現実のはざま

 ついに最終日を迎えた3日目の早朝。わたしはすくっと起き上がり、率先して、手慣れた手つきでおつとめができるようになりました。しかも「ほら、あんたもちゃんとやって」と、子どもに促せるまでに。

 黒い法被を羽織り、気持ちを整え、班のみんなに会いにゆくべく、砂利を踏み鳴らします。そう、もうなんか、「班のみんなに会う」という感覚になっていたんですよね。

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「あ! おはよう!」

 クラスに向かう途中で班の女性たちに会うと、自然と前日の話になります。

 わたしがはかなげな女性へ、

「わたしの友達も、姑と折り合いが悪い人、いるんだよね。その子も、勝手に趣味のものとかを捨てられるって言っていて」

 と言えば、

「そうなんだ。ほかにもそんな人がいるんだね。昨日、思いきって打ち明けてみて、よかった。だって、こんなふうに、みんなの意見が聞けたから」

 と、彼女がほっとした表情を見せます。

 なんだろう。このカタルシスは。わたしの存在が役に立ったこの満足感は。

天理教、22万人の信者が集う「おぢばがえり」に潜入

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 天理教の合宿潜入から、はや半年以上たった6月。夫側の家族グループLINEに、義母からメッセージがありました。

<今年の「こどもおぢばがえり」は7月末ですよ>

 夫の実家へ帰省するたびに聞いたことがあるこの単語、「こどもおぢばがえり」。以前、夫に聞くと、

「きぐるみのパレードやアトラクションがある、天理教本部で開催される子ども向けイベント。毎年、両親兄弟その子どもたちのほか、近所の子どもたちも誘って、天理市までマイクロバスで行く」

 と教えてくれました。その説明を自分なりに解釈すると、「子供向けの露天がたくさん出た、天理教の夏祭りってことなのかな?」と、駅前通りを交通規制して歩行者天国にするような、地元の夏祭りを想像していました。

「よし、今年こそ天理教のお祭りに行こう」

 

いざ天理教の「天理駅」へ

 ついに当日。関東に住むわたしたち家族は電車で、夫の実家のひとたちはマイクロバスで、天理駅前で待ち合わせ。電車が天理駅ホームにすべりこむと、ここからもう「こどもおぢばがえり」が始まっていることに気づきます。ホームに天理教のゆるキャラ(ピッキーとリボン)の旗が無数にはためいているのですから。

 さらに改札を出ると、それは顕著に。地方の新幹線停車駅に匹敵するほどどデカい天理駅の壁面に、ドーンと横断幕が張られているではありませんか。

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<ようこそ おぢばへ 近鉄> 天理教、知られざる「後継者合宿」と信者22万人が集う「おぢばがえり」に潜入してみた!の画像10

<ようこそおぢばへ こどもおぢばがえり JR西日本>

 驚くことに、鉄道会社のクレジット入り。これぞ宗教都市の貫禄。いよいよ市を挙げてのお祭……じゃなかった、イベントの様相を呈してきます。駅前で義家族らと落ち合うと、まずは天理教本部まで歩きます。メンバーは、夫の両親と兄弟の家族2組、そして、その兄弟の子どもの友達だという、近所の小学6年生10人。みな、お揃いの帽子をかぶっており、わたしたちの子どももかぶるよう促されました。周りを見るとみな同じように、帽子、Tシャツ、タオル、タスキ……などを揃え、グループごとに移動しているのがわかります。

天理教、異常なクオリティの「アトラクション」がある

<ジョイフルパーク>

 そうした看板が立てられた敷地には、滑り台やボールすくい、ボルダリング、ミニジェットコースターなどが設置されていますが、これ全部、手作りなのだそう。

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 スタッフは高校生〜大学生くらいのようで、遊ぶ子どもたちを手際よく誘導します。

「それぞれアトラクションごとに、“県”が運営しているんだよね。ここはどこだっけな」

 義兄が教えてくれます。彼も高校生の頃に、「自分の所属県が運営しているアトラクションを手伝ったことがある」そうです。

 決められた時間内での遊びが終了すると、待ちに待った昼食です。なんでも、「おぢば名物といえば、カレー!」と義母が沸き立つほど、とにかく昼食のカレーが子ども心をつかんで離さないそう。

天理教の集客力は、GLAY超え!?

 「おぢばがえり」の夜は、参加者やスタッフなど総勢何万人が本部参道(のような場所)で見物するパレードが行われるのです。パレード時間前に続々とひとが集まるその規模は、目視で明治神宮花火大会並みでしょうか。

 夜、いよいよパレード開始、の前に、おつとめの時間です。シーンと静まり返ったかと思うと、あの歌が低く響きます。あかりは灯篭の灯りだけ、といったほの暗さのなか、荘厳に響き渡る何万人もの天理教信者たちの神への祈りは、信者ではない近所の子どもたちの目にはどう映っているのでしょうか。

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 おつとめが終わると一転、

「パレードのはじまりでぇす!」

 と、司会者の景気の良い声がマイク越しに響くと、頭上でドッカンドッカンと花火が上がり、参加者のボルテージはマックスに。

 そうして参道(?)の入り口から続々とパレードがやってくるのですが、これまで想像していた「てきとうな着ぐるみがわらわら手を振ったり練り歩く」を根底から覆してきたのが、先頭を歩く天理教校学園高等学校のマーチングバンド。え、プロ!? プロなの!? 一糸乱れぬ行進と純度の高い演奏に、またしても鳥肌ゾクゾク。今すぐにでも自衛隊音楽隊に入隊できそうです。

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 彼らに、エレクトリカルカーや各県や地域で結成された鼓笛隊、チアリーダーが続き、

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1時間ほどでパレードは終了となります。

 すごいのが、これ、10日間毎日やっていること。

 

<「天理教のツマ、『宗教合宿』2泊3日潜入記」バックナンバー>

■(第1話)夫の実家は「天理教」!? 
■(第2話)「宗教都市」はディズニーランド!?
■(第3話)喜捨精神、奉仕の心、“宗教あるある”に翻弄された私
■(第4話)“天理教ド素人”の私が、たった2日で「仕上がった」!?

最終更新:2019/10/21 18:33
天理教の考え方・暮らし方
今週末に天理教のお祭りありますよ~
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