知られざる女子刑務所ライフ76

元女囚が考える「薬物中毒者の親」問題――米『セサミストリート』では子ども番組で依存症を語る時代に

2019/10/20 16:00
中野瑠美
『セサミストリート』公式サイトより

 

 覚醒剤の使用や密売などで逮捕起訴され、通算12年を塀の中で過ごした後、その経験を基にさまざまな活動を続ける中野瑠美さんが、女子刑務所の実態を語る「知られざる女子刑務所ライフ」シリーズ。

合法の処方薬で中毒に

 突然ですが、子ども向けの番組は見ておられます? 仮面ライダーシリーズとかは主婦のほうがハマってるそうですね。

 私も獄中生活などもあって、やや短い期間ではありましたが、子どもたちとテレビは見てました。『仮面ライダーアギト』(テレビ朝日系)の要潤さんが好きやったのは前にも書いてますが、今回は、子ども番組は子ども番組でも、アメリカの『セサミストリート』のお話です。

 『セサミストリート』もまったく見たことないわけではないですが、ぶっちゃけピンときませんでしたね。「人形がなんかしゃべっとるなあ」くらいで。でも、もう50年も続いて、140カ国以上で放送されているそうです。

 番組には「いじめの被害者」や「親がムショにいる子ども」が登場するなど、わりと社会的なテーマも扱ってるそうで、それが人気の秘密なんでしょうかね。最近では、「オピオイド中毒の親」を持つキャラクター「カーリー」が話題になりました。更生のために離れて暮らすお母さんのこと、面倒を見てくれている里親さんのことなどを話したそうです。

 日本ではあまりメジャーではないですが、覚醒剤と同じような「多幸感」のあるオピオイドという化合物は、鎮痛剤にも入っていて、日本でも処方してもらえます。でも、これも覚醒剤と同じで、多幸感のあとには無気力になります。気持ち悪くなることもあるし、あとは興奮して騒いだり、記憶障害や精神障害の症状も出ます。ある意味、覚醒剤よりもひどいかもです。それに、摂りすぎると、呼吸抑制作用の末に昏睡状態になって死ぬこともあります。要するに「合法の処方薬も、たくさん飲んだらアカン」という例なんですね。

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ヒーローやプリンセス以外に描くべきものがある
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