海外ドラマ『ハンドメイズ・テイル』7つのトリビア――「原作ではモイラは白人で、エミリーは名無し」「ジェーンの部屋に隠された意味」

2019/09/28 18:00
堀川樹里

2)舞台はアメリカだが、撮影はカナダ

 『ハンドメイズ・テイル』の舞台は主に、ギレアドにより統一されたアメリカのマサチューセッツ州ボストンだが、実際の撮影はカナダで行われている。ギレアドの主要施設のほとんどはトロントで撮影。レッドセンターは聖エイダン教会、司令官たちが娼婦と遊ぶセックスクラブ「イゼベル」は、フェアモント・ロイヤル・ヨーク・ホテルで撮影されている。

 ジューンが侍女として派遣されたウォーターフォード夫妻の自宅は、カナダ・オンタリオ州ハミルトンの「ザ・グランド・デュランド」と呼ばれる邸宅。同州ケンブリッジでは、見せしめのために吊るされた死刑囚や遺体の血のあとを侍女たちが掃除するシーンを撮影した。

 また、反逆者が劣悪な環境で強制労働させられる「コロニー」は、同州中南部にあるアックスブリッジで撮影されている。

3)主人公の親友モイラは、原作では白人

 ドラマでは、白人、黒人、ラテン系、アジア系などさまざまな人種の女性たちが、侍女、司令官の妻、マーサと呼ばれる家政婦たちを演じている。しかし、原作では「ギレアドは厳格な人種差別体制(白人至上主義)を敷き、有色人種は全員アメリカ中西部に追いやられる」という設定のため、主要登場人物は全員が白人。ジューンの親友である黒人女性モイラも、原作では白人なのだ。

 番組の製作総指揮者ブルース・ミラーは、米エンタメサイト「TVLine」のインタビューで、「(小説の中で)“有色人種は全員、別の地に追いやりました”と文字にすることはたやすい。しかし、テレビドラマの映像として“見せる”ことは、かなり難しい」「人種差別をテーマとしたドラマであっても、“人種差別的なドラマ”という印象を与えてしまう」とし、本当に伝えたいテーマが視聴者に届かなくなると懸念して変更したそう。

 これについては、原作者マーガレットと白熱した議論を繰り広げたが、最終的に彼女はブルースの意見を受け入れてくれたとのこと。実は原作は、一部の読者から「白人女性だけの闘争に焦点を当てる、“ホワイトフェミニストたちのディストピア”」と非難されていた。ブルースは米誌「Vanity Fair」で、この設定変更について多くのファンから「素晴らしいアイデア」と喜ばれたことを告白。一方で、正確さを求めるファンからは批判も受けたことも認めた。

侍女の物語
現代日本と変わらないぐらいのディストピア
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