ドキュメンタリー教育映画『記憶』公開記念座談会

少年犯罪や非行少女は他人事じゃない【刑務所のアイドルPaix2(ペペ)×元レディース・中村すえこ】

2019/09/08 19:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

摘発される少年犯罪は減っていても、再犯者は多い

中村すえこさん

――最近の少年犯罪についてもお聞きします。少子化の影響で少年院の収容者数も減り、全国の施設で統廃合が進んでいると報じられていますね。一方で、少年犯罪の件数自体は減っていても、「振り込め詐欺」の受け子などで摘発される子どもたちは増えています。警察庁の調査などによると、刑法犯で摘発された少年は2万3,489人で、戦後最少を更新しています。でも、振り込め詐欺事件で2018年の1年間に摘発された20歳未満の少年は750人、前年の約1.6倍に上り、約8割が現金受け取り役の「受け子」です。

中村 最近の「受け子」にはワルっぽくない、いわゆる普通のイケメンふうの男の子も多いようです。罪の意識がないのでしょうね。建設現場で一日汗を流して働いても1万円にもならないのに、「受け子」なら2万円か3万円くらいにはなりますから、真面目に働く気はなくなりますよ。少女の売春も同じで、短時間で高額のお金をもらえますから、検挙されても、また同じことを繰り返します。摘発の件数は減っていても、再犯者は多いんですね。また、薬物犯罪も増えています。

――警視庁管内での大麻取締法違反の検挙件数は6年連続で増加しており、少女の覚せい剤取締法違反の事案も後を絶たないようですね(警視庁生活安全部少年育成課・平成30年中の「少年育成活動の概況」)。しかし、中村さんと、Paix2(ペペ)のお2人の「失敗しても人生を諦めないで、前を向いて歩いてほしい」というメッセージは、多くの方に伝わっていくと思います。

中村 はい。少年院に入って、社会に出て、また失敗しても諦めないでほしいです。映画にも、そういう思いを込めています。

Manami 私たちも「元気だせよ」をはじめとして、刑務所や少年院だけではなく、いろいろな方への応援歌をたくさん作っているので、ぜひ一般の方にも聴いていただきたいです。

――お2人の夢は、『NHK紅白歌合戦』への出場だそうですね。

Megumi はい、それだけが夢ではありませんが、もしも、そのような機会があれば、刑務所のグラウンドからの中継で出演させてほしいです。紅白は、大みそかの家族だんらんの象徴です。社会の皆さんに、幸せとはどういうことかを考えてもらえる機会になるのではないかと思うからです。塀の中で過ごす人もいれば、家族と過ごす人もいる。幸せの対比を幅広く伝えることができれば、少しでも犯罪の抑止につながるのではないかと思っています。

――ありがとうございました。

Paix2(ペペ)
Manami(マナミ、北尾真奈美)とMegumi(メグミ、井勝めぐみ)によるデュオ。01年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。アルバムに『逢えたらいいな』(05年)、著書に『逢えたらいいな―プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』(12年、鹿砦社)など。デビュー1年前から全国の刑務所や少年院などでの公演「Prisonコンサート」を続け、「受刑者のアイドル」と呼ばれる。14年に保護司、15年に矯正支援官に就任。16年 には「Prisonコンサート」400回の功績に対して法務大臣より感謝状を授与された。ユニット名はフランス語で「平和」を意味するpaix (発音は「ぺ」)を二つ重ねている。2019年7月より北海道・月形町の「月形観光大使(観光典獄)」に就任。「典獄」は「刑務所長」の意。
公式サイト

中村すえこ
ドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』監修・監督。15歳で少女たちの暴走族・レディースの総長となり、傷害事件を起こして少年院に1年間収容される。結婚、出産、離婚を経験してシングルマザーとして働きながら、09年に創設された少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加、多くの出院者と交流を続ける。著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(08年、ミリオン出版)が『ハードライフ~紫の青春・恋と喧嘩と特攻服~』(関顕嗣監督)として11年に映画化。
『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式サイト
法務省東京矯正管区主催上映会
日程:2019年9月22日(日)
場所:矯正研修所講堂(東京都昭島市もくせいの杜2-1-20)
上映時間:上映開始11:10〜中村すえこ舞台挨拶(終了13:10)
入場料:無料
主催:東京矯正管区
問い合わせ:東京矯正管区第三部 048-600-1500

最終更新:2019/09/08 19:00
Paix2/しあわせ
温かい目を持てますように
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