ドキュメンタリー教育映画『記憶』公開記念座談会

覚醒剤、万引、パパ活、整形――少年院の少女たちの事情【元レディース総長・中村すえこ×刑務所のアイドル・Paix2】

2019/09/07 19:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

子どもは親を選べない

Megumi

――出演している少女たちは、それぞれ親との葛藤を抱えていました。保護者の考え方もそれぞれですし、少年院の先生である法務教官にもいろいろな方がいらっしゃるのだと思いますが、子どもたちに寄り添うことの難しさがわかります。

中村 非行に走る原因は、たいていは親との関係です。その親もいい育ち方をしていないことがほとんどです。親に愛されたことがないから、うまく愛情が表現できないのも、彼女たちの特性ですね。自分のことも好きじゃないんです。

Megumi それ、わかります。以前、コンサートの後にいただく感想文に、「こんな私と握手をしてくれて、うれしかった」と書かれていたことがありました。私は「公演を聴いてくれてありがとう」という気持ちで、普通に握手をしただけなんですが、まだ子どもの彼女たちが「こんな私」と言っていて……。反抗も、したくてしているのではないのでしょう。自分がどうしていいかわからない子どもたちと、距離を縮められたらいいですね。

中村 私もそうでしたけど、子どもたちは寂しいんです。当時は、それすらわかりませんでした。それで、私の場合は暴走族ですが、知り合った仲間次第で窃盗や美人局、男の子ならオレオレ詐欺の受け子などの非行に関わっていくんですね。そういう子どもたちは「加害者」ではあるんですが、その前に家庭が貧困だったり、虐待や育児放棄をされていたりした「被害者」なんです。

――そんな環境で生まれ育ったら、「いい子になれ」というほうがムリですね。

中村 でも、世間の大半の人たちは、加害者である少年が被害者という事実は知らないし、知ろうともしません。「少年院に収容された非行少年」と言う印象しか持っていません。事件を起こして少年院で学び直しても、社会に出てまた挫折してしまう子どもたちもいることを、多くの方に知っていただきたいと思っています。

――私たち大人が温かい目で見守れば、状況は変わるかもしれませんね。

中村 作品が別世界の話ではないと感じてほしいです。こうした事実を知ることで、人も社会も変われると信じています。

Megumi 私は、たまたま学校に行かせてもらえたけれど、そうではない子どもたちもたくさんいる。直接彼らに何かをできなくても、それを「知ること」から始まるんですね。
(後編に続く)

Paix2(ペペ)
Manami(マナミ、北尾真奈美)とMegumi(メグミ、井勝めぐみ)によるデュオ。2001年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。アルバムに『逢えたらいいな』(05年)、著書に『逢えたらいいな―プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』(12年、鹿砦社)など。デビュー1年前から全国の刑務所や少年院などでの公演「Prisonコンサート」を続け、「受刑者のアイドル」と呼ばれる。14年に保護司、15年に矯正支援官に就任。16年には「Prisonコンサート」400回の功績に対して法務大臣より感謝状を授与された。ユニット名はフランス語で「平和」を意味するpaix (発音は「ぺ」)を二つ重ねている。2019年7月より北海道・月形町の「月形観光大使(観光典獄)」に就任。「典獄」は「刑務所長」の意。
公式サイト

中村すえこ
ドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』監修・監督。15歳で少女たちの暴走族・レディースの総長となり、傷害事件を起こして少年院に1年間収容される。結婚、出産、離婚を経験してシングルマザーとして働きながら、09年に創設された少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加、多くの出院者と交流を続ける。著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(08年、ミリオン出版)が『ハードライフ~紫の青春・恋と喧嘩と特攻服~』(関顕嗣監督)として11年に映画化。
『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式サイト

法務省東京矯正管区主催上映会
日程:2019年9月22日(日)
場所:矯正研修所講堂(東京都昭島市もくせいの杜2-1-20)
上映時間:上映開始11:10〜中村すえこ舞台挨拶(終了13:10)
入場料:無料
主催:東京矯正管区
問い合わせ:東京矯正管区第三部 048-600-1500

最終更新:2019/09/08 23:13
CD/Paix2/おかげさま
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