【連載】傍聴席から眺める“人生ドラマ”

「“商社のノリ”を教えてあげる」と誘って強姦……“勝ち組”被告の卑劣な手口「準強制性交裁判」

2019/09/04 16:30
オカヂマカオリ
「東京高等地方簡易裁判所合同庁舎」Wikipediaより

 殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#002号法廷】

罪状:公然わいせつ、準強制性交等
被告:T男(当時24歳)
逮捕に至る経緯:平成31年3月、就職活動のため有名商社にOB訪問していた女子大学生・Aを、当時社員だったT男が就業時間外に居酒屋とカラオケに誘う。無理に酒を飲ませ、Aが意識を失ったところで強姦。

 今年に入り取り沙汰されるようになった、いわゆる「就活セクハラ・パワハラ」事案です。日本労働組合総連合会が今年5月に行ったアンケート調査によると、「就職活動中にセクシュアル・ハラスメントを受けたことがあるか」という質問に対し、「ある」と答えた人は10.5%で、全体の1割に達していたとのこと。その中で、被害を受けた割合がもっとも多いのは「20代男性」で21.1%、次いで「30代女性」が15.5%、「20代女性」が12.5%という結果でした。

 「就職活動中に受けたことのあるセクシュアル・ハラスメント」についての質問では、被害を受けた男性の半数近くが「性的な冗談やからかい」と答えたのに対し、女性は「食事やデートへの執拗な誘い」「必要のない身体への接触」「性的な関係の強要」と、さまざまな種類の被害を受けているよう。もちろん、どの行為も断じて許してはならないという前提で、女性が受けやすいセクハラは、今回のような“強姦”という最悪のケースにつながる可能性が高いように思えます。

 さて、今回は初公判なので、まずは検察による冒頭陳述からスタート。ざっくり言うと、事件の「あらすじ」みたいなものが、法廷で読み上げられるのです。「被告はこんなに悪いことをしたし、証拠もきっちりあるので、罰するべき!」と、検察が立証するわけです。そんな冒頭陳述は、以下の通り。

 就活中の女子大学生・Aさんによると、被告の第一印象は「軽いノリで、苦手なタイプ」。OB訪問で被告の会社を訪れた際、一緒にランチをしただけでなく、就業時間後も被告は「もっと仕事のことを教えてあげる」などと、Aさんを飲みに誘っていたといいます。被告の同僚も同席するという安心感から、飲み会へ行くことにしたAさんは、居酒屋でも“仕事モード”を崩さずに、ウーロン茶を飲んでいたそう。しかし、被告に「酒飲まないの? それじゃ商社じゃやっていけないよ?」と飲酒を促された揚げ句、「二次会で“商社のノリ”を教えてあげる」とカラオケに連れ出されてしまいます。

 そして、Aさんは否応なしに「このフレーズを歌ったら酒を一気飲みしなくてはいけない」というゲームに強制参加。結果的に、Aさんはアルコールを6杯も飲まされ、気分が悪くなって1人トイレへ。混濁した意識の中で用を済ませ、個室を出ようとしたところ、被告が薄笑いでドアの前に立ち、Aさんを待ち構えていたのです。そしていきなり胸を揉まれ、下着の中に手を入れられて「ここが気持ちいい?」などと陰部を触ってきたそう。Aさんは意識ははっきりしていたものの、ショックのあまり体が硬直、まったく抵抗ができない状態に陥ります。

 その後、被告とその同僚は、Aさんがあらかじめ予約していたビジネスホテルへ彼女を送っていくことに。2人でAさんをベッドに寝かせ、部屋を出て行く際、同僚から「これで手を出したら“強姦”だからな」と言われたにもかかわらず、被告は部屋のキーをこっそり持ち出し、1人でホテルに戻ったそう。そして、昏睡状態のAさんを強姦。痛みで目を覚ました時には、鼻息を荒くしてニヤニヤしている被告がAさんに覆いかぶさっていたといいます。何とか逃げてトイレに駆け込んだものの、Aさんの震えは止まらず。被告はそんなAさんに向かって、トイレの外から「俺の(ペニス)硬いままなんだけど、どうしてくれる?」などと威嚇。逮捕の決め手となったのは、このホテルの防犯カメラに1人でAさんの部屋から出て行く被告が写っていたからだそうです。

就活のリアル いまどき就活の歩き方
こんなの絶対に許されちゃいけない
アクセスランキング