『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』、『24時間テレビ』の裏で放送した障害者ドキュメントの意味

2019/08/27 16:05
石徹白未亜

今後も障害者の番組は続いていくのか

 ともかの番組内容は、美談や本音ともまた違い、淡々と日々を追っていた。脊髄損傷になると尿意も感じなくなり、数時間おきと決めてトイレへ行かないといけないことや、原因のわからない体調不良にもなること。バリアフリー化が進んでいるとはいえ、電車などの公共交通機関は車椅子生活では気兼ねしたり、不便なことも多いということ。これらは、すべて今回番組を通じて知った。

 今回『ザ・ノンフィクション』がともかの回を『24時間テレビ』の裏に当てたのは、きっと『バリバラ』同様に“狙った”のだろう。その結果、日テレ、NHK、フジテレビの3局が8月25日に障害に関する番組を放送した。この“超党派”によって、これまで「明るいところしか出しちゃいけない」番組しかなかったところから、そうでない伝え方ができている。数が増えれば、またさまざまな伝え方が増えていくはずだ。

 『24時間テレビ』が放送される8月は、日本人にとって原爆が投下された終戦の月であり「戦争」をテーマにした番組が多く放送される月でもある。気が重い、暗くなる、つらい、と避ける人も多いし、私自身見ないことの方が多い。それでも、それら番組によって「今年もこの時期が来た」と戦争についてわずかでも思いを馳せることはあるだけに、その流れだけはなくなってほしくない。

 『24時間テレビ』は8月の最終週の週末に放送されることが多い。そして、それに合わせ他局が障害の番組を同日に放送する流れが今後さらに加速していけば、8月が戦争の困難の中生きた人や命を落とした人に思いを馳せるのと同様に、今、障害を抱え、困難の中生きている人に対して思い、考える月になっていけるのかもしれない。

 次回の『ザ・ノンフィクション』は「母さん 帰ってきてほしいんだ ~フィリピンパブ嬢の母とボク~」フィリピンパブで働く女性とその客である日本人男性の間に生まれた2人の青年による漫才コンビ「ぱろぱろ」。同じ境遇の2人が抱えるそれぞれの家族の問題について。

石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂

最終更新:2019/08/28 16:04
さあ、バリアフリー温泉旅行に出かけよう!
視点の豊かさは他者への寛容につながるよね
アクセスランキング